ペイン

パワー・オブ・ザ・ドッグのペインのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.0
グザヴィエ・ドランが映画監督を志すきっかけとなった傑作『ピアノ・レッスン』のジェーン・カンピオン監督新作。『燃ゆる女の肖像』のセリーヌ・シアマ等もカンピオンを崇めている一人。

Netflixでこの間配信になり、この度友人と鑑賞。

”The Power of the Dog(犬の力)”とは、「我が神、我が神よ、 なぜ私をお見捨てになるのですか。 なぜ遠く離れ私を助けずに、 私の言葉を聞こうとされないのですか」という言葉から始まる旧約聖書「詩篇22」からの引用らしい。

つまるところ、当時イエスを敵対視していた宗教派閥“サドカイ派”や、武器を持ったローマ兵のことを指す。本作はその“犬の力”(権力や表面的で有害な男らしさ)のようなものからの解放の物語であると言える。

暴力でカウボーイたちをまとめ上げる粗野なジョン・ウェイン演じる古い価値観の家父長的な“西部の男”(旧世代)と、モンゴメリー・クリフト演じる新しい価値観を信じる世代の若者とのぶつかり合いの果ての歩み寄りと融和を描いたハワード・ホークス監督の名作『赤い河』を思わせる設定と内容である。

西部が舞台の作品としては正直ちょっと綺麗すぎるというか、映画としての作りも優等生過ぎるきらいはあったものの、撮影監督アリ・ウェグナーによる格調高い映像の説得力は確かなもの。アリ・ウェグナーさんは『燃ゆる女の肖像』とそっくりなフローレン・スピュー主演の『レディ・マクベス』の撮影監督と知り合点がいった。

また、ベネディクトカンバーバッチは最近のキアヌ・リーブスばりの髭面と汚ならしさ(良い意味)で爽やかな英国紳士俳優のイメージを払拭するが如く、性差別男を怪演!新境地を見せた。

P.S.
作風及び音楽が『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』感あるなと思ったら、やはりジョニー・グリーンウッド!
ペイン

ペイン