YasujiOshiba

フリークスアウトのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

フリークスアウト(2021年製作の映画)
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U次。24-33。キャッチアップ。なぎちゃんと。いやあおもしろかった。タッチがどことなくマカロニ・ウエスタンだと思ったら、監督のマイネッティと原案のルーカ・グアッリャノーネのふたりはセルジオ・レオーネをリスペクとしてるんだよね。なっとく。

時代設定も実にイタリア的。けれども、イタリア史を知らなくても十分に楽しめるし、知っていればニヤリと笑える脚本。原案のグアッリャノーネが「デ・シーカとロッセッリーニが『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』と出会った」というだけのことはある。イタリアだけどハリウッド。ハリウッドだけどきっちりイタリアなのだ。

しかし、この映画がなににもましてオマージュを捧げているのは、きっと1932年のアメリカ映画『フリークス』 なのではあるまいか。これは、舞台は旅回りの見世物小屋で出演者は本物の奇形者や障害者だってことで衝撃だった作品。グラン・ギニョールとも呼ばれる場末の見せ物小屋的なアトラクションってのは、劇場でみんなとおどろおどろしいものを共有する楽しさという意味での、映画のルーツのひとつなのだ。

だからといって、すべてがファンタジーというわけじゃない。なにしろこのイタリア映画は1943年のイタリアのローマを舞台にしている。歴史的には、イタリアは9月に休戦協定を発表して三国同盟を抜け出し、国王は逃げ出して、放棄した国土のほとんどがドイツの支配下に入る。

そんな歴史の描き方がスピーディで見事。サーカスのテントが落ちて、ドイツ軍が流れ込んでくる。街に逃げ出した主人公たちは、そこでユダヤ人の一斉検挙と収容所への移送を目撃する。それは1943年10月16日のローマ・ゲットーで起こった史実。また、ベッラ・チャオを歌いながら登場するパルチザンの「ゴッボ(せむし男)」はジュッゼッペ・アルバーノという実在のローマ・パルチザンがモデルなのだ。

いやはや、それにしても、ポリコレ的には問題だらけの異形の人物たち(フリークス)がどんどん登場。敵役のフランツは指が6本の多指症でかつ、未来を透視できちゃうという設定、だから未来の戦争やスマホの登場までもが時代と混然として、なんでもありのごった煮感をみごとにまとめてくれる娯楽作。

キャストもよい。チューバッカのような狼男フルヴィオを演じたクラウディオ・サンタマリアは『ジークロボ』でもマイネッケとからんでいて、今回は顔が見えないけれどいい味を出している。マティルデのアウローラ・ジョヴィナッツォはダンサーでもあるという。だから転がりっぷり、走りっぷりがみごと。

それから、虫使いのチェンチオは、あのセルジョ・カステリットの息子ピエトロ。ひろっとして、優雅で、鼻が父親譲りのデカかさだけど、意地悪そうだけど悪いやつじゃないのがよい。このピエトロくん、近作の『Enea』(2023)で監督・脚本・主演を果たしていて、これを高く評価する論評を読んだ。予告編も見たのだけれど、なんだかすごく見たくなっているのです。日本くればいいのだけどね。
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