マグルの血

ある男のマグルの血のレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
4.0
別人に成り済ましていた男の正体を追う話。

よくできたサスペンス。緊張感と陰鬱さが同居したストーリー。見応えありです。

亡くなった夫の葬式に来た疎遠だった夫の兄が放った衝撃の一言「この人誰ですか?」。
そこから人権派の弁護士城戸が真実を探るのですが、よくあるサスペンスと見せかけて根本のメッセージは分かりやすく丁寧に描かれている印象。

成り済ましに至るまでの経緯や、それぞれのバックボーンが綿密に作り込まれており、2時間の制限の中で中弛みなくストーリーが入ってきます。間の使い方がいやらしくなく、見易い。

人間の識別をいかにして行うかが本作で問われるところかな、と。人種、家庭環境、あらゆる場面で差別が行われることがありますが、差別の根幹とは何か。名前や経歴などの所謂書面上の情報で人間を知るということは如何なることか。本質は追求せず、レッテルを貼って一生を過ごす。名前を失う、変えることでどんな気持ちになるか。
都合よく物語が進む中でも適切にテーマが処理されていくので、強制的に思考するいい作品だと思います。
作中の小見浦という男、かなり嫌な男ですが、意外と本質を突いているのかもしれませんね。
ラスト、どう解釈するべきか。誰しも変身願望がある…は拡大解釈だけど、少しずつのきっかけで人間どうにかなりたくなるときもある。事件を追い続けることで主人公の心境が変化していく、揺れる心の持ちようがこの作品の見所でしょうか。

豪華キャストで彩られる一見の価値がある映画だと思います。

2024年 21本目
マグルの血

マグルの血