センター分けのましゅちゃん

死刑にいたる病のセンター分けのましゅちゃんのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.1
FansVoiceJP さん試写会にて。

その狂気は足を踏み入れれば
踏み入れるほど、
沼のように絡みつき
逃れられなくなる。

それでも自分とは程遠い世界ほど
触れてみたくなる。
覗いてみたくなる。
狂気と魅力は表裏一体。

天使の顔を貼り付けたその悪魔は
鬱屈し、ぶつけのようのない
漠然とした不満に身悶える自分の中に
ゆっくりと入り込み、
その心を溶かして、やがて毒してゆく。

果たしてその”悪魔"を
"悪魔“だと割り切れるだろうか。

なにかひとつの欠落や、
異常を持つだけで
単なる"犯罪者"だと切り離せるのか。
それ以外は何の変哲もない人間だとしたら。

悪魔より悪魔らしいものが
社会に多く渦巻いている中で
この"悪魔"と我々の境界は
案外あやふやなのかもしれない。

いつのまにかその悪魔に魅せられ
捉えられそうになる自分に
恐怖を感じた。

阿部サダヲさんの無機質さの奥に
確かな狂気を秘めた目が恐ろしい。

面会室という密室での二人芝居を
巧みに利用して、
一枚ガラス越しという絶妙な距離感から
大和の妖艶で危険な魅力に
取り込まれてゆく雅也の揺れを
演出する映像が斬新ですごい。

分厚いように見えて、
案外薄い大和と雅也を隔てる境界を
面会室のガラスで巧みに演出し、
その境界をゆっくりと溶かして、
確実にこちら側へと介入し、
引きずり込もうとする
大和の恐ろしさに震えた。