ゆめちん

パラレル・マザーズのゆめちんのレビュー・感想・評価

パラレル・マザーズ(2021年製作の映画)
3.5
パラレル・マザーズ
 
"ペイン・アンド・グローリー" 以来の、ペドロ・アルモドバル監督×ペネロペ・クルスの組み合わせということで、公開前から楽しみに。
 
写真家のジャニスと17歳のアナは、同じ日に同じ病院で娘を出産し、ともにシングルマザーとして生きていくことを決意する。しかし、セシリアと名付けた娘と対面したジャニスの元恋人の言葉をきっかけに、意外な事実が判明する。
 
アルモドバル監督が "血の繋がり" をテーマに、"同じ日に出産した2人の母親の物語" と、"スペインの内戦による悲劇" について描いていく。
 
同じ日に出産した2人の母の運命が、切実な問題を経てひとつになる瞬間は、観ていて様々な感情が沸き上がり複雑な気持ちになる。
対照的なジャニスとアナのキャラクターがしっかりと構築され、ジャニスが真実を知った時の苦悩、アナと再会しさらに悩まされる様などが丁寧に描かれる。ただジャニスの本当の子供への思いなど、もう一歩深く踏み込んでほしいところがあり、少し物足りなさを感じた。
 
作品全体を振り返ると、時間配分や挿入箇所に違和感はあるが、監督が本当に描きたかったのは、実は "スペイン内戦" に関する物語の方ではないかと想像する。
内戦を経験したお年寄りたちが語る言葉はあまりにもリアルで、時代を超えて何代も受け継がれてきた女性たちの記憶を紡ぎながら、次世代に何を伝えていくべきかをしっかりと問い、監督も含めたスペインの人たちの思いをずっしりと感じさせてくれる。
 
本作でアカデミー主演女優賞にノミネートされただけあり、ペネロペ・クルスの演技は素晴らしく、心の奥底に苦悩を抱えるシングルマザーを見事に演じ切る。個人的には彼女はアルモドバル作品に出ている時が、最も生き生きと演じているように思える。
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