amu

余命10年のamuのネタバレレビュー・内容・結末

余命10年(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

重い病の絡む恋愛映画は苦手ですし、そもそも得意な人なんていないと思うのだけれど、とても多くしかも定期的に映画になるところをみると一定数の需要があるのだろうと思う。なんでなんだろう。

世界の中心で愛を叫ぶ
余命1ヶ月の花嫁
君の膵臓をたべたい

、、、などのように。


この作品では最後に「小坂流加に捧ぐ」と表示がされ、エンドロールとなった。前情報もこの作品についても知らずに観た私は、そこで初めてこの作品が実話を元にしたものだと知ることとなった。完全なるノンフィクションでは無いにしろ、今作の主人公が書いた小説の中の小説のようなくだりも、実際にその小坂流加さんという方の話がこの映画の原作なのだった。そうなると、エンタメとしての映画とは少し趣旨が異なるようにも思え、向き合い方も難しいと感じる。エンドロールになるまで実話だとは知らなかっただけに少なからずショックでもあった。重みが全く変わってくるというか。

「余命1ヶ月の花嫁」も確か実話をもとに映像化された。だけどその女性の方についても男性の方についても蓋を開けてみると美談からは遠いリアルがあり、美談に仕立て上げるべくテレビでドキュメンタリー番組等があったようだ。映画は観たがそれらの番組については知らなかったので後から「やらせ」だと別の意味でとても話題になったことは記憶している。この作品とは全く異なるものだし、時代も違う。だけど、タイトルのあたまの言葉が同じなのはちょっと、いや、だいぶ痛い。ご本人が小説につけたタイトルが恐らく「余命10年」というものだから仕方ないといえば仕方ないけれど、完全にかぶってしまっている。ゆえに同じ系統だと一括りのイメージを持たれてもいたし方なさがある。さらに哀しいことにタイトルのインパクトやフレーズが「余命1ヶ月の花嫁」に比べ弱い上に二番煎じである。何度も言うが本人がそういうタイトルにしたのだから二番煎じだろうが関係ないことはわかっている。わかっているけど、原作本はそれで仕方ないとして、映像化のタイトルは「10年」だけでもよかったかもしれない。…と、大きなお世話なことを考えてしまった。また、実話であるなしに関わらず、タイトルに「余命」と付いているだけで辛い話だというわかりやすすぎるほどのストレートな言葉が重たい。


キャスティングについて。
小松菜奈さん、この役にはちょっと合って無かったかも。あまり魅力を感じられなかった。なんでかな。

坂口健太郎さん。
普通だった。普通に良かったと思う。
そもそも苦手な系統の今作を観ようと思えたきっかけは彼が目当てでした。好きゆえに演技力のイマイチさがずっと残念で、後から出てきたメンノン仲間の成田凌さんの演技力の方が抜けていてどんどん置いてけぼり感があったけれど、今期の大河ドラマで少し期待がもて始めたのと、普通に笑顔を見たくて。?

で。うん。よかったと思う。

お姉さん役の黒木華さんは安定の良さ。
同級生役の山田裕貴さんも良かった。山田裕貴さんは声とか話し方が良いんですよね。それは黒木華さんにもいえる。

お父さん役の松重豊さん。久々に良いと思えた。孤独のグルメとか猫村さんとか古くはクローズZEROの時とか演技があんまり好きじゃなくて。でも今作の役は静の演技、終盤に流した一筋の涙のシーンなどもらい泣きした。

リリーフランキーさんは、海街diaryの時のおじさんだった。静のリリーさんパターン。この方が出てくるとタダで済まないことが多いけど、ある意味ただの居酒屋のおじさんモブではやはり終わらなかったなと思った。良い方のリリーさんとして。

全体を通してのツッコミどころ。
他の方のレビューにも書かれていたのですが、一刻も早く駆けつけなくてはという場面で自転車て!というのは私も思った。いい大人なのだからそこはタクシーだろというのも。さらに土地勘があるゆえに黙っちゃいられなかったのが、隅田川を挟んでスカイツリーを左手前方にした画を撮りたいがあまりに位置関係の度重なるコンパスの狂いよう。居酒屋の位置、病院の位置。

それから、リリーさんに今日はもう上がっていいよと言われこれまたいても立ってもいられずまつりに会いたくて走り出すシーン。真冬設定なのにTシャツ(居酒屋のユニフォーム)一枚で飛び出し、やみくもに夜の街をあちこち走りまつりを探すシーン。どうした。急に携帯の無い昭和の恋愛ドラマみたくなって。で、何故か会えるわけだけど、「最寄り駅しか知らなくて」って、おい。LINEは知ってるやん。まずは連絡したら良かろう。あまりに無鉄砲。

藤井監督らしさを感じる描写もあって、ただ辛いだけの話では無かったし美しさもあったけれど、セカチューやキミスイのようなぐっとくるものは正直無かった。

それと。桜って、儚くて美しくて辛いなって改めて思った。
amu

amu