『書くが、まま』、『根矢涼香、映画監督になる。』上村奈帆監督の最新作がオンライン映画祭で無料配信中ということで鑑賞。
波の音、セミの鳴き声、線香花火の光。ある夏に出会った絵描きのカナエとそのモデル・ユウ。彼女たちの忘れられない思い出の1コマを描く。
濱口竜介監督作『親密さ』の主演も務めた平野鈴さんと、『書くが、まま』に続いて監督とのタッグになった長谷川葉生さんの二人による恋愛ドラマ。
冒頭で紹介した2作品のカラーが好みだったため、正直に好きかどうかと尋ねられると難しい作品ではあったけれど、監督が本当に描きたい内容に向き合っている印象もあり、届く人に届いてほしい映画だなと強く感じた。
監督の作品では人間関係における"負の側面"(罪悪感やすれ違いなど)が共通して描かれていると思う。
特に初期短編の『決別』を観た際には、それを強く実感したが、今回の作品も同じような感覚を抱いた。
それぞれの思いと、そのすれちがい。
描く(あるいは、書く)ということを用いつつ、その関係性を描写する辺りも監督独自のカラーだなと思った。
(その点では、絵描きの女性が主役の初期作『蒼のざらざら』も未見なので、気になるところ。)
驚いたのは、"劇中画 出演"として、西山真来さん(『なんのちゃんの第二次世界大戦』『東京の恋人』『れいこいるか』に出演)も携わっていたこと。それゆえ、ミニシアターファンは、特に必見の作品といえるかも。
セリフや物語以上に、役者の演技や画で魅せていく部分も多く、受け手に委ねられる余白が多い作品でもある。
しかし、だからこそ、観るタイミングや観る人によって印象が異なる自主映画の強みを感じられる一作だった。