延々と歩く

アステロイド・シティの延々と歩くのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.1
 前評判で「意味不明」「ぜんぜん分からない」と聞いていたから覚悟していたけれど、一時間ほどは普通に楽しい。まあ僕くらいの頭脳だと一般ピーポーぶっちぎるよねゴメンなさ~いと調子こいてたら中盤以降あっさり放り出された。

 いやオモロイのはオモロかったんすけどね。1時間45分の映画で一時間のれたら充分もとは取れてると思うし。ツイストしまくるメタフィクションな語り口も「噓もマコトも我々にとってはみな重要である」というメッセージなのだろう。多分。

 しかし「フィクションの形をとった精神的な『自分語り』」というのはどうしても難解なものになりがちなんすかね~「君たちはどう生きるか」などもそうだったけど。マジメに気持ちを綴れば綴るほど、文章が細かくなって読みとく方は困惑するという感じだろうか。

 終盤には「観客を心地よく眠らせるための演劇」なる概念?が出てきて、この難しさは意図的なものらしいと明かされる。「目覚めるためには眠らなければならない」というセリフが連呼され、伝わるものはあるが、どういう意味かは分からない。

 「人形アニメを手掛けてるから役者まで人形みたいに撮っている」との批判もあるらしいが割と生っぽいエネルギーを捕まえてたと思う。亡き妻をめぐる夫と息子たちのドラマも、ありがちだけどリアルな温かさがある。

 バキバキに作りこんだセット撮影中心というイメージの監督さんだが、今回はスペインの砂漠でロケをしており、日没寸前の風景など感心するほど美しい。

 アート映画の女神であり続けているティルダ・スウィントンや「ストレンジャーシングス」のマヤ・ホークは毛並みもスタイルも良すぎて全身うつると何頭身あんのかしらとなる。こういうキャスティングがルッキズムとかネポリズムの極致なのかどうかは分からぬが、写真家の息子に好意を持つ女の子などは個性的な顔立ちで印象に残る。いやこの流れで書くとアレみたいだけど充分可愛いんですよ。昔の三谷幸喜のドラマみたいなバランス。
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