サン

アステロイド・シティのサンのネタバレレビュー・内容・結末

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

解説動画を見て、次見た時に何か掴めるんじゃないかと期待を込めてこの評価。
初見で予備知識なしだと、内容は何がなんだかわからなかった。場面が変わるたびにほぼ別の話として見て、画面デザインの良さだけをずっと感じていた
各場面の印象は強く残っていると思う。特に窓際にスカーレットヨハンソン(ミッジ)がいるところ、あそこは強烈だった
あと宇宙人可愛かった〜

映画見終わって、途方に暮れていると、友人がシネマリンさんのYouTubeを見て面白そうだったので見てみた。この作品の素晴らしさが少しわかった気がしたので、自分なりの理解に少し改変し、納得できた部分を書いておこうと思う

ウィスアンダーソン監督の映画は徹底的に統制された演出が特徴的で作り物感(フィクション感)がある。
大きな枠組みとしてカラーで描かれている舞台「アステロイド・シティ」のシーンと、白黒で描かれる舞台のメイキング番組のシーンの2つある。劇中劇、入れ子構造となっている
この映画のややこしいところは舞台のセットの中にいるからといって役者達が常に演じているとは限らないというところ。役柄ではなく役者本人となって喋っていることがある。舞台とメイキングの境が曖昧になっていることで、ひいてはメイキングの世界と僕らがいる現実も曖昧であることを感じる
この映画はメソッド演技ということにもフォーカスを当てている
スカーレット・ヨハンソンが演じるのはマリリン・モンロー、ルパート・フレンドが演じるのはジェームズ・ディーンがモデルになっていて、それぞれメソッド演技の代表的な俳優
メソッド演技は1940年代に確立された手法で、まず自分の役柄について徹底的なリサーチを行う。劇中の感情や状況に合わせて役者が実際に体験した感情の記憶を呼び起こして自然でリアルな表現をする。というもの。つまり、どこまでが彼らが役柄を演じている部分で、どこから役者が素で話している部分なのかが曖昧になる。どんどん役と役者の境目が曖昧になる
「起きたいなら眠れ」というフレーズが印象に残るけれど、眠る=フィクションに触れること、起きる=現実世界で救いを得ることのメタファーと考えるとおもしろい
ウェス監督の映像の撮り方の特徴としては、役者の顔のクローズアップを極端に絞っている点が挙げられる。徹底的に統制されたウェス・アンダーソン的演出だが、クローズアップによってそれが破られ、その瞬間に観客がはっと驚く。この仕掛けによってその瞬間エモーションが爆発する

「私たちがわかった。どんな人間たちか。致命傷を負いながら痛みの深さを見せない。嫌だから。それが私たち。」ミッジの言葉。この言葉好きだな

シネマリンさんの解説動画を知れて良かったです。感謝です。

つまりこの映画は、
・フィクションと現実世界の曖昧さが描かれている
・現実世界で救いを得たいならフィクションに触れろというメッセージがあると解釈できる
・作り物感(フィクション感)というものが特に強いウェス監督の演出の中だからこそ、そんな中でもフィクションと現実が曖昧さになっているということで、その曖昧さが強調され、ウェス監督にしか作れない強度のメッセージ性のある映画ができている
んじゃないかと思う
このポイントを意識してまた見てみたい
サン

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