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THE FIRST SLAM DUNKのohassyのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.0
観る前のモチベーションは

セルルック3Dっぽいけどどんなルックを選択したの?
単なる原作エピソードのアニメ化なの?
っていうか山王戦なの?どうなの?

という感じで、どちらかといえば確認の気分で劇場に足を運んだのだけれど。

見たことのない少年が登場したなと思った次の瞬間に「リョータの話か!確かに原作では5人の中で最も描き方が薄いし!」と気持ちのギアが上がり、みんな大好きオープニングシークエンスで「山王戦か!」とトップギアに。
そうだよな、山王戦以外にないよな!

僕は世代的に過去のアニメシリーズはほとんど見たことがないのだけれど、漫画も世代ではないけれど歴史に残る完璧な作品のひとつとして捉えているくらいには好きだ。
最後の攻防が描かれている数ページは神々しさすら覚える畏敬の念を抱いていて、あれを体験するために最初から読み返したりすることがある。
2004年に三崎高校で開かれた「SLAM DUNK 10 days after」も、アート展に行く感覚で行った。
あれはよかったな。

と言うことで、さて山王戦。
井上雄彦はどう描く?

などと斜に構える隙もなく、30年くらいずっと応援し続けるバスケットボールチームの試合を、最後まで固唾を飲んで見守ることになった。
これはやはり、山王戦前までの彼らの悲喜交交を、ずっと昔からよく知っているからだろうが、結果がわかっているにもかかわらず1プレイ1プレイに一喜一憂させるパワーに改めて驚嘆させられた。

31巻に及ぶ原作の中の1部を、原作者自らがアニメ化して、熱狂的なファンが支える、という構造は、万人に向けた興行作品というよりはクラウドファンディングで作られたと言われた方がしっくりくる作品だ。
だからこれは、僕のような原作ファンであり井上雄彦を特別視する連中のための作品だ、ありがとう井上雄彦そして湘北のみんな!と心から感動した。

のだけれど、原作はあまり読んだこともないし、アニメシリーズもそんなに観ていない、そんな人も結構大絶賛する。
これはかなり驚いた。
つまり基本的にはバスケの試合を描いているだけだが、彼らのバックスストーリーを随所に挟み込むことで湘北のファンにさせ、ちゃんと応援したくなるように出来てるということだ。
そしてあの2時間だけで彼らの魅力をしっかり理解させ、好きにさせるキャラクターの強さと、手に汗握るドラマチックな試合展開が、存分に描かれているということだ。

確かにそうだ、僕も全てわかっているのに、まるで初めて試合を見ているかのようにドキドキしてしまった。
アニメを見たというより、試合を見たという感想の方が正しい気がする。

これは有名な話だけれど、劇場に観に来ていた小学生くらいの女の子が小さな声で祈るように「はいれ…」と呟いていたという。

そう、本作の魅力はこの一言に尽きる。
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