ちろる

ダンシング・ヒーローのちろるのレビュー・感想・評価

ダンシング・ヒーロー(1992年製作の映画)
3.8
地味で存在感のない女の子が、野暮ったいメガネを取るとたちまち可愛くなるという古くから使われるベタなバージョンのシンデレラストーリーであれど、この作品はその恋の部分がメインテーマではないのでさほどその古典的なワザも気にならない。
「ダンシングヒーロー」と聞けば今や日本では昨年リバイバルヒットを遂げた荻野目ちゃんのディスコ風ダンスを思い浮かべる人も多いとは思うが、こちらで描かれるダンシングはガッチガッチにステップの規律に縛られた社交ダンスの世界。
その厳しい規律に縛られた範囲でパフォーマンスして王者になるのか、自由なステップを取り入れて失格覚悟で人の心を動かすダンスをするべきのか?
という葛藤に悩む、主人公のスポ根系の青春物語をユニークな人間関係を主軸に描いた非常に軽快で観やすい作品でした。
これは26年前のバズ ラーマン監督の初の長編作品ということもあり、ダイナミックで鮮やかな印象のバズ ラーマン節はあまりない。
ただ、恋に落ちる主人公2人が屋上のCoca-Colaのイルミネーション看板をバッグに初めてダンスをするシーンは必見で、夜明けの空と、ネオンの明るさ、そして徐々に恋に落ちていくダンスの美しさのコラボレーションの演出にはやはりその後ヒットを連発する監督になるだけの素質が十分垣間見れました。

日本でもいま、相撲もレスリングも新体操も、いろいろ組織の体制が一挙集中してややこしい問題を抱えていますね。
権力を持ちすぎた故に、その競技が真に発展していく事を後回しにして、純粋に才能のある選手が消されてしまう事があり得るというのは、どこの国でもどこの時代でもあるんだなぁと改めてしみじみ思い切なくなります。

この作品みたいにこういう悪の根源みたいなのにみんなガツンと喝を入れる、世論がその選手を喝采して才能を守っていく。
それだけなのに難しいんだろうなー。
爽快でポップなダンス映画だったのにそんな事をエンディングで考えてしまいました。
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