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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲のKEiGOのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

ここまで沁みるか…!
「ちゃんと見るか~」と、久しぶりに入った地元の居酒屋がこんなに名店だったとは。バキ童が事あるごとに"月の石"を再現するから、振り返って観てみるかってだけだったのに笑
そう、まさにその"月の石”のシーンが僕の涙腺を崩壊させました。責任もなく、ただ無邪気に楽しめた子供時代。少年の日の思い出、ノスタルジーを思い起こさせる"懐かしい匂い"に身を委ねて、現実を逃避していたひろしが、自分の人生を回想するのが本当に沁みる。ひろしが生きてきた証が心を揺さぶった。最後に観たのももう随分と前。「あぁ、自分もオトナになったんだな、オトナになってしまったんだな…」と。これを観る大人、もっと言うと親の人生を肯定してくれる名シーンであり、同時にその背中を前に押してくれるシーンでもあります。
我らがオタキング岡田斗司夫も主張していますが[1]、ひろしが現実に進もうとする一方で、甘くやさしく懐かしい20世紀を捨て切れない残酷さもありますね。家族を捨て去って過去に戻ろうとしかけてしまうひろしの逡巡が堪らないですね。誰もが抱える日常へのうんざりをえぐってくる原恵一の腹黒さが素晴らしいです。

このとんでもなくディープなテーマを子ども向けに、しかもしんのすけのギャグを散りばめながら、サスペンス・アクション・ドラマ様々な要素を織り交ぜて、劇場アニメに昇華させた手腕にはぐうの音も出ません。


つらく、苦しいオトナ帝国を、それでも生きよう。


参照
[1] 岡田斗司夫, "大人が見る「クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲 」〜完全解説中級編 / OTAKING explains "Shin-chan "pt2", May 8, 2020, https://youtu.be/76ZkKK5NgXE?si=IBc4ChYG_OYtJsgK
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