マルケス

最後の決闘裁判のマルケスのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
またメンドクサイ映画を撮ったなあ…。鑑賞後、真っ先に浮かんだのがコレ。
プライドや所有欲に生きる男達、尊厳も人権もなく泣き寝入りする女性達、妊娠にまつわるバカバカしい迷信、裁判、宗教、政治。議論好きなら当時と現在を絡め、何時間でも語れそうなほど内容が濃い。

メインとなるのは決闘へと繋がる事件。三者三様に食い違う記憶を『羅生門』的手法で再構築している。
愚かしいのはル・グリもカルージュも、自分の記憶が事実だと信じ切っていることだ。人は見たいものしか見ず、自分の知識や判断が正しいと思いこみたがる。自己正当化バイアスがどれだけ事実を歪めるかを見せつける。

マルグリットが見せた決闘後の表情がいたたまれなかった。正義も神の意思も自らの命でさえも、男に委ねられている。絶望と諦観。彼女はあの時、不条理に充ち満ちた現世を見限ったように思う。

リドリー・スコット監督の歴史物は風格すら漂う。史実の一幕を重厚かつドラマティックに演出する力量に衰えなし。
マルグリットを演じたジョディ・カマーだけでも観る価値があった。男どもが束になっても敵わない演技力とオーラ。こんなにコスチューム・プレイが絵になる女優さんはケイト・ブランシェット以来だ。
マルケス

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