天豆てんまめ

ブレードランナー ファイナル・カットの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

4.1
世紀末のイメージはこの映画に導かれた。

作品特有の退廃的なムードと映像美に浸れる。時折出てくる強力ワカモトには苦笑しつつも、この世界観にはデジタルサイネージに舞妓CMは合っている。雨降り続けるダークな映像美は冴え渡り、隅々まで考え尽されている。リドリー・スコットは脳内に明確な映像美学とビジョンをもっているのだなと改めて思う。

でも、記憶よりも切ないラブストーリーがドラマを牽引している。音楽がメロドラマ調で不穏と不幸を煽るよう。デッカードとレイチェル。ハリソン・フォードとショーン・ヤング。人間とレプリカント。この2人のささやかな幸せを祈りたくなる。ショーン・ヤングのまさしく人工的な美しさが眩い✨

そして、ルドガー・ハウアーの狂気と悲哀の宿った瞳がたまらない。単なる肉体派のラスボスではない、知性的な哲学者のよう。そして、命の灯が尽きようとする彼の台詞がたまらなくいい。

「俺はお前たち人間には信じられない光景を見てきた。オリオン座の近くで炎を上げる戦闘艦。暗黒に沈むタンホイザー・ゲートのそばで瞬くCビーム。そういう想いでもやがて消える。時がくれば涙のように 雨のように……その時がきた」

史上最高に美しい敵の死に様。肉体派詩人のルドガー・ハウアーの雨に打たれる姿が心に残る。