都部

屋根裏のアーネストの都部のレビュー・感想・評価

屋根裏のアーネスト(2023年製作の映画)
3.1
近年のタイムループ映画の大傑作『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー・ランドンによる新作は、およそ望ましくない落ち着きを得ており脚本演出共に目覚ましさに欠け、本作に新たな秀作足り得た完成度であると太鼓判を押すことは残念ながら出来ない。しかしながらデヴィッド・ハーパー演じるバーコード髪の幽霊アーネストの魅力が作品の面白さに少なくない貢献を果たしており、平凡なプロットに多少の魅力を与えていることは間違いない。

親子関係に問題を抱える黒人の少年ケヴィンの霊的現象に対する冷めた今時の反応から、SNSによるバズりを経由して、幽霊がコンテンツ化して社会問題の的になるという展開の今時の風潮に沿った作劇は『今時である』以上の意味を持っておらず、賑やかしい程度には面白いがそれ以上の意味を発揮出来ていないため子供騙しのようにも映る。このアーネストのコンテンツ化が親子関係の問題を表面化させて中盤以降の展開を形作る為に無駄ではないが、立ち上がりの鈍重さとやりたいだけの現代劇という印象が覆るほどではないので余計にそう思うのもあるだろう。

そうした前半部分と比較するとアーネストの過去に迫るシークエンスからは、無関係に思えたアーネストの物語とケヴィンの物語が思わぬ形で接続されて物語としての方向性が一本化されていくため徐々に巻き返していく。アーネストの噂を聞き付けてCIAや霊媒師が介入する事態の混沌化も楽しいが、しかしこれらの作劇上の調理は終盤に到来する真相開示部分の状況作りの為のガジェットでしかなく、『幽霊が実在すると世界に知れたら……』というシチュエーションの妄想の余白を埋めるだけだったのは惜しい。我ながら文句ばかりだがアーネストとケヴィンの問題が重なり、ドラマの姿形が明るみになる部分はエモーショナルだったように思うし、後半部分のロードムービー的な足取りを初めとして序破急と尻窄みを感じさせない物語の編み方は映画としては適切である。
都部

都部