こたつむり

沈黙のパレードのこたつむりのレビュー・感想・評価

沈黙のパレード(2022年製作の映画)
3.5
♪ もっと泣けばよかった 
  もっと笑えばよかった
  バカだなって言ってよ 
  気にするなって言ってよ
  あなたに ただ逢いたくて

映画版『ガリレオ』第3弾。
このシリーズは探偵ではなく、犯人側にフォーカスを当てるのが特徴。なので、本作も同じだと思って臨みました。

だから、事件の作りは早々に看破。
超有名ミステリと同じ図式なんですよね。これは新しい試みだと思ったし、超有名ミステリの弱点もフォローできている…なんて感じたんですが…。

うーん。
それでも尺が足りなかったのか、映画のために省いた(と思われる)アレンジが裏目に出たと思います。とてもあっさりしているんですよね。

確かに撮影当時はコロナ禍真っただ中。
色々と制限は多かったと思いますが、事件全体が無味無臭に近くなってしまったのは残念な話。主人公の福山雅治さんの“粗”が目立つ結果にもなっていますし。

それに勿体ないんですよ。
冒頭の5分なんて最高の仕上がり。ここでググっと惹き込まれたのは事実なんで、その方向性で突き詰めてもらえれば最高だったんですがね。

あるいは『砂の器』方式とか。
後半で視点を大胆に変えちゃえば、着地点の余韻は大きかったと思います。勿論、原作を離れるのは「一か八か」の賭けでしょうから、製作委員会方式では無理かもしれませんが。

まあ、そんなわけで。
苦言が先立ちましたが、全体的に見れば無難にまとまっている佳作。ホームランを狙うのではなく、良ければ内野安打…くらいの気持ちで逆方向を狙えば楽しめると思います。

それにしても。
柴咲コウさんのイメージが昔と変わっていて、最初は気付きませんでした。尖っている感じは同じなんですが、知的な雰囲気が増していて、主人公の“湯川教授”よりも落ち着いちゃっているんです。そういう意味では本作の最大の被害者は福山雅治さんでしたね。
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