みかぽん

The Son/息子のみかぽんのネタバレレビュー・内容・結末

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

日本では親より早い子供の死を逆縁と言う。こうした親たちは死んだ子供が迎えることの無かった歳を日々数えたり、あったかも知れない未来を様々思い描いては打ちのめされを繰り返す。
如何なる理由があっても、親より先に亡くなることは最大の親不孝に思う。勿論、病いを抱え苦しむ当人に向けて親不孝と更に追い討ちをかけるのかと叱られても、客観的に見てやはり不幸は変わりなく、事実として命を断てば親は絶望するのだ。人の幸せは、夢や希望を持てる環境にあること、あるいはそれを想像出来る対象を持つ事と思うのだけど、幸せの対象が子供である限り、それが潰えてしまう。結果を述べればやはりそう言うことなのだ。

いずれにしても、心の病いは残酷だ。
例えば、同じ心が付いたとしても心臓の病いであればどうだろう。異常があれば酸素をうまく全身に運べないから、動悸や息苦しさで運動が制限されてしまう。こうした分かりやすい異常で見つければ周囲も納得出来て、検査も対処も容易だ。
しかし、憂鬱が続く、イコール、身体がセロトニンやドーパミンを作れない、あるいは脳がそれらを取り込めないと聞かされても、その状態は開けて見えるものではないし、ましてや映像に写り出せるものでもないから、切った貼ったでは治せない。もし究極の2択なら、私は臓の付く病気の方を選び、性格的問題者の汚名と、行先の見えない自身への不幸感だけは避けたいと思います…🥲🥲。

心の病は現状、貧富に関係なく、その意味で平等だが、今の地位を不断の努力で勝ち得た主人公にしてみれば、息子に忍耐強く対峙しても無意識に上目線で接してしまい、関係を悪化させてしまう。そこで又立ち止まり、理解しあえない関係だった自身と父親についてもを掘り下げ始める。父を反面教師としていた自分のはずなのに、、と更なる迷宮へ迷い込む。

なんだか結論でまとめて申し訳ないが、息子には親の愛以前に医療措置が必要だった。しかし時に愛情はその判断さえもを曇らせてしまった、と言うこと。
今までの姿勢が、努力が間違っていたのか。あるいは愛情が充分でなかったのか。であれば、この究極で息子を信じよう、の判断が結果として最悪の状況を招いてしまう。
あの掬い上げてからの奈落があまりに残酷な本作、あぁ観るんじゃなかった、の後悔に染まる絶望的作品…😞😞⤵︎⤵︎。
みかぽん

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