ゆめちん

The Son/息子のゆめちんのレビュー・感想・評価

The Son/息子(2022年製作の映画)
4.0
The Son/息子
 
精神的な病は "愛" だけでは治せない
 
優秀な弁護士のピーターは、新たな家族と幸せな日々を送っていた。そんなある日、前妻と暮らしていた17歳の息子ニコラスが、心に病を抱え、自ら父親のもとで暮らしたいと懇願する。ピーターはそれを受け入れ、現在の家庭に迎え入れる。
 
認知症をテーマにした "ファーザー" のフローリアン・ゼレール監督が、本作で扱うのは "メンタルヘルス" という非常に繊細なテーマ。苦しみを抱えるのが10代の青年とあって、前作よりずっと暗くて重い雰囲気の作品になっている。
 
ピーターと二コラスだけでなく、ピーターとその父親との関係も平行して描かれ、重ね合わせて観ると親子のすれ違いが切なく、終始やるせなさを感じてしまう。

この世に完璧な親もいないし子もいない。お互いが無意識に理想を求め合い、それらが満たされないことで不満を抱く。本作ではそれらが極端な事態を招くけど、そんな "親子関係の難しさ" は、程度の差こそあれ、どんな親子でも経験することではと思う。
 
ただ親の立場であれば、自分の言動や行動が子供にどんな影響を与えるのか、冷静になって細心の注意を払うべきだった。今現在の息子をしっかりと見つめて向き合って欲しかったし、"愛" だけでは解決しない問題だと気づいて欲しかった。父親が "理想の息子" を思うとき、いつも"幼かった頃の姿" なのが観ていて辛かった。
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