まぬままおま

とどまるか なくなるかのまぬままおまのレビュー・感想・評価

とどまるか なくなるか(2002年製作の映画)
4.0
里佳が学校への早道として墓地を抜けるのは不自然だと思いつつ、それが物語に死の匂いを漂わせるためであることを観客は展開を経て知ることになる。

どこにでもいそうな家族の平凡な幸せ。そんな幸せは、反転する地図を契機にするかのようにゆっくり壊れていく。父が赴任先のペルーでテロに遭うこと、母の容態が急変すること、兄が家族の元を去ること。それらは里佳の行為ではない外部要因ではあるが、里佳と家族の関係を変えてしまう。

家族が家にいないこと。自分勝手に好きにできる「自由」は、中学生の里佳にとって至福である。しかしそれは生活から切り離された自由であって、彼女がスーパーで買い物ができようと、洗い物などの再生産労働は滞り、野菜が腐るように生活が崩れる。

里佳はそんな崩れる生活の中で留まるか、亡くなるか。
明け方に裸足で外にでる彼女は、墓地に留まる気がしてならない。