ドント

牛首村のドントのレビュー・感想・評価

牛首村(2022年製作の映画)
-
 2022年。清水崇監督による村三部作の3本目。身の周りで不可解なことが起きている女子高生・奏音。自分そっくりの少女が心霊スポットで失踪したことを知り、因縁を感じて友達以上恋人未満な同級生と現場に向かうのだったが……
 村三部作の中では一番「怪談」的、つまり因果因縁がベッタリとへばりついて回るような内容で、恐怖表現もそれにふさわしくビックリ系ではなしにジワジワくるタイプで占められている。画面の端の端にしれっと立っている一瞬とか、蜃気楼の中に佇む人影とか、オオッ? なんか違うぞ? と思わされる。
 呪いに触れて死んだ結果「死に続けている」YouTuber(?)2人の異様なショック描写も堂に入っており、またおそらく期せずして撮れたであろう荒天の下の駅のホームでのやりとりは「絵」になっていて見応えがあった。前2作(と、ついでに『忌怪島』よりも)見所は多い。
 一方で因習村に積もり積もった「呪い」の禍々しさやその爆発の契機となったであろう人物周辺の描写が甘く、不特定多数が死なないこともあって、怨みつらみパワーに説得力が欠ける。エレベーターのシーンなんかもう、落下の衝撃で箱ごと外れてフロアの人たちが潰されるくらいの祟りが起きてほしかった。蓄積した「落下」ないし「ぶつかる」呪いだというのならば、なおさらそうであろう。性別問わずドシドシ祟ってほしいものだ。
 また後半の強引な空間移動は主人公らの精神感応を背景にした流れなのであろうが、そこらへんの下支えも弱くてどうにも乗り切れない。「うーんそうかい?」と思ったままクライマックスに突入し、クライマックスもやたらと長い上にカタルシス(負であれ正であれ)に乏しいので尻すぼみに感じる。さらに言うならこの内容で115分はいかにも長い。
 とは言え主演のKōkiは「主役、これで3本目ですけど?」くらいの、映画/ドラマ初出演とは思えない堂々とした存在感があったし、初出演で皮膚の下を幼子の顔面が這い回って悶絶するという難しい役回り(?)もこなしていて「すごいもんだなぁ」と感じた。ただ存在感がありあまっていて村人くらいなら蹴り飛ばしそうなオーラがあり、彼女が怯えたり逃げたりするだけの展開には少し不満が残った。たぶん日本刀とかロケットランチャーが似合うと思うので、今後の活躍に期待したいです。
ドント

ドント