TS

オーストリアからオーストラリアへ ふたりの自転車大冒険のTSのレビュー・感想・評価

3.9
【地球を肌で感じる】83点
ーーーーーーーーーーーーーーーー
監督:ドミニク・ボヒス/アンドレアス・ブチウマン
製作国:オーストリア
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:88分
ーーーーーーーーーーーーーーーー
 2022年劇場鑑賞19本目。
 めっちゃ良かったです。本当はもう少しスコアあげたいくらいですが冷静になり抑えました。賛否分かれると思いますが僕は全面的に肯定したいです。編集がよろしくないという意見もあるかもですが、こんな良い意味でお馬鹿でステキなことを自分達だけで撮影して編集したのでしたら上出来すぎです。呑気に先生なんてやってていいのか、とも思わされましたし、この地球にうまれたからには死ぬまで地球のことをもっと知りたい、と常々自分が思っていたことを思い出させてくれる、好奇心をくすぐってくる良作ドキュメンタリーと思いました。旅行好きやぶっ飛んだ企画が好きな人は見てほしい作品です。

 今作はオーストリアのアンドレアスとドミニクが自転車でオーストラリアまで行こうとする破天荒なドキュメンタリーです。海路を除く距離18000km、訪問国19カ国、11か月もかけて彼らはオーストラリアに到達します。その道のりを彼らはドローンやGoProなどの撮影機器を自転車に搭載し撮影していきます。評価できるのが、これといったビッグスポンサーをつけずに、撮影をほぼ全て自分たちでしているところです。これが妙にリアリティがあり、不測の事態になった時は自分達で解決をしてから見応えがあります。ビザがなくなる、入国の許可がおりないなどの生々しい現実もうつされます。思えばカザフスタンの草原地帯なんて、運良くトラックを捕まえられたから良かったものの、数日誰も通らなかったらどうしてたのでしょうか。ある意味死と隣り合わせの過酷な旅でして、時には弱音を吐きながらもそれをリアルに見せてくれることに感動しました。

 そして、訪れる数々の場所がまた素晴らしくて地球の偉大さを痛感できます。カザフスタンの草原地帯もそうですが、ヒマラヤをのぞめる中国とパキスタンの国境地帯やネパールの静かな森など、その場に行かないとわからないような絶景を今作は非常に綺麗な映像で見せてくれます。また、彼らを歓迎する現地の人たちも素晴らしい。時には警戒しながら彼らに寄ってくる人々もいましたが、気づけば夜な夜なみんなでダンスパーティをしているというのは微笑ましい展開。旅人にしかわからない非常に喜ばしい瞬間です。コロナ禍の中すっかり旅行にいけなくなったこのご時世、こういう映像を見たら胸騒ぎがしてきます。旅の面白さ、地球の偉大さを思い出させてくれる作品と思いました。

 それにしてもインドのパートには笑わされてしまいました。僕もインドには行ったことがありますが、本当に交通ルールが存在するのかというくらいぐちゃぐちゃ。道路に牛はいるわ、ノーヘル二人乗りのバイクがうじゃうじゃいるわ、1秒たりともクラクションが鳴り止みません。そんなカオスな交通路を彼らは自転車で通っていくわけですから滅茶苦茶面白い。日本では考えられない光景です。靴を盗まれたという話も、さすがインドだなと思わされました。

 よく自転車で日本横断ということを聞きますが本企画はスケールが桁違い。当の本人たちももう二度としたくない、と言っているほど過酷な企画でした。人間ってなんでこんなお馬鹿なことをしようと思いつくのだろうと思ってしまいますが、これをしている2人を本当に凄いと思ってしまいますし、ある意味羨望の気持ちさえあることから、僕自身この問いの答えは見つけられそうにありません笑

 実際にこれを成し遂げた2人は、死ぬまで語れるネタができましたし、大きなことを達成すればその後の世界がまた変わって見えることでしょう。本当にいつか世界一周でもしてみたいものです。確かに映画としては淡々としていて編集に雑さがあるので微妙という声もあるかもしれませんが、企画としては及第点であり、素晴らしいロケーションの映像を堪能させてくれたので、控えめにしてもこの点数です。
TS

TS