くりふ

ここから出ていけ!のくりふのレビュー・感想・評価

ここから出ていけ!(1977年製作の映画)
3.5
【福音派という名の悪魔】

特集上映「ボリビア・ウカマウ集団制作 革命の映画/映画の革命」にて。

米国の医師団が、ボリビア先住民の女性に不妊手術を行っていた事件を描いた『コンドルの血』を引き継ぐような内容でした。

『コンドルの血』ではインディオ殲滅に失敗した白人たちが、今度はいかに利用し搾取するかを企み、先住民の村々にキリスト教の宣教師を送り込みます。神を刷り込み手懐けようとするんですね。

実際、素朴な村人たちの中からは信じる者も出て来ますが、既に「白人ウソつく」ことを知っているから、信者とそうでない者とが分かれてしまい…。

インディオ共同体の調和が神によって崩れてゆく。宣教師が村に来た際、マタイ書の「平和でなく争いをもたらすために来た」の一節を読みますが、その通りだわ(苦笑)。

しかし、侵略者の本当の狙いはその先にあった…。

これもひどい話ですねえ。村は焼き払われ、村人は軍に殺され、もちろん宣教師が説く神は現れないし、西部劇のように騎兵隊が助けに来るわけでもない。…あ、来たら殺す側か(笑)。

インディオたちは自力だけで、村を超え結束せざるを得なくなる。映画の目的は鮮明で、タイトル通りの「ここから出て行け!」という叫び。冒頭、白人たちが村に現れる所からすでに帰れ!で始まります。

が、侵略者は儲かるならば帰らない。利益のためなら命まで毟る。先住民は先進国の捨て石であることが容赦なく描かれます。

しかし小さな石でも集まれば強くなる、という描写が所々に現れ、救いです。心打たれたのは、仲間のための家づくり。宣教師から村に診療所を作ってあげますよ…と甘く囁かれても、実際作らされるのは村人自身だったりするんですが、これが自分たちの家づくりと対置されています。

本作、決して「巧い仕上がり」とは思えませんが、共に「ここから出て行け!」と叫びたくなりますね。これは自分の中に巣くう差別意識を意識、することにもなると思います。

<2014.5.7記>
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