千年女優

コットンテールの千年女優のレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
3.5
愛する妻の明子を亡くした初老の男性で、寺の住職から生前に明子の遺言状を受け取った兼三郎。『ピーターラビット』を愛してイギリスのウィンダミア湖への散骨を望む彼女の願いを叶えるためわだかまりを抱える一人息子の慧一家とイギリスに訪れた彼が、旅路の中で複雑に絡み合う家族への想いをほどいていく様を描いたドラマ映画です。

オックスフォード卒の英国人監督で学生時代の短編が評価されたパトリック・ディキンソンが、かつて早稲田大学で学んだ縁で手掛けた卒業制作『USAGI-SAN』の後日譚として制作した長編作品で、 橋口亮輔監督作品『ぐるりのこと。』で共演したリリー・フランキーと木村多江が再び夫妻役を演じ、錦戸亮と高梨臨が息子夫妻の役で支えます。

監督の介護経験を基にしたグリーフワークを描く物語で、テーマと相性の良いロードムービーの形式が奥行きをもたらします。やや女性を『女神』や『天使』に神格化している所はありますが、一人の女性を巡る夫と息子のすれ違いという独自の視点があり、はまり役を得た演者達の存在感と決して大仰にしない演出で説得力を与える一作です。
千年女優

千年女優