ジミーT

おニャン子・ザ・ムービー 危機イッパツ!のジミーTのレビュー・感想・評価

5.0
映画評論家の町山智浩さんによれば、アイドル映画の目的は「アイドルを輝かせること」(注1)。
しかし、1人のアイドルならいざ知らず、この大人数をどう輝かせろというのか。そこで原田眞人監督が考えた作戦は「ジョン・フランケンハイマー監督のタッチで」(ご本人談)(注2)。

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私は「さらば映画の友よ インディアンサマー」に惚れ込んでいたので、この映画も初日に駆けつけたのですが・・・。
なるほど。コンサート会場→スタジアム爆破計画→「ブラック・サンデー」→それでフランケンハイマーか。つながった。
確かに、何十人単位の集団アイドルだから1人だけに光をあてるわけにもゆかず、また、製作期間、予算、おニャン子クラブのスケジュール等、制約も大きかったかと思います。そこでいかにも原田監督らしい苦肉の策が「ブラック・サンデー作戦」というのは考えたな。この作戦とその実現にスコア5.0。
脚本も自ら執筆しているので、原田監督の個性も顕著に出ていると思います。

しかしこれではおニャン子さんたちはただの標的としての役割しか与えられず、ドラマに関与できない。ドラマに関与できない以上、「輝く」ことはできません。主役はあくまで爆破集団であり、それを阻止せんとするおニャン子クラブ側のスタッフであり、コンサート会場にマラソンでかけつける少年であり。
だからこれは「アイドル映画」ではなく、アイドルを標的にした70年代型ネオ・エンタテインメント映画(注3)と言ったほうがいいですね。このタイプの映画がなくなって久しい時期だったのでそれなりに面白く観ましたよ。

スーパースターを主役ではなく題材として扱い、そのニューヨーク公演をめぐるファンの大騒動を描いた映画としてはスピルバーグ製作総指揮、ロバート・ゼメキス監督「抱きしめたい」が思い浮かびます。あの手法でもよかったのかな。でもあれは1964年のビートルズを回顧した話だから良かったんであって、1986年にリアルタイムのおニャン子クラブでやったら汗臭く、泥臭くなりすぎたでしょうね。

注1
「町山智浩のアメリカ映画特電」
「『もしドラ』VS『がんばれ!ベアーズ』」
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注2
出典忘却。忘却とは忘れ去ることなり。
原田監督が製作にあたってどこかに書いてたんです。たぶんキネ旬かな?違ったかな。
確かに書いていました。本当ですって。信じて!

注3
70年代後半、評論家の故・石上三登志さんが提唱していた新しい型の小説や映画。SF、アクション、ミステリ、ハードボイルド、ポリティカル・フィクション等々のジャンルの要素を横断的に詰め込んだジャンル不要のエンタテインメントを指していました。映画では「カプリコン・1」「サブウェイ・パニック」「合衆国最後の日」等々。
「ブラック・サンデー」もそうかもしれません。

追伸1
「007ロシアより愛をこめて」は最初「007危機一発」という題名で公開され、「一発」の表記が日本語表記として物議をかもしたらしいのですが、ブルース・リーも危機一髪ではなく「ドラゴン危機一発」でした。危機で一発、敵を倒すのだからこれでも良いでしょう。
しかし「危機イッパツ」とはよくぞ考えた。

追伸2
現在、YouTubeで予告編を観ることができますが、これがまたいかにも原田眞人監督らしい。

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