ジミーT

男はつらいよ 寅次郎心の旅路のジミーTのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

前作「寅次郎サラダ記念日」ではかなり重いテーマを扱っており、次回作からは満男の青春篇がスタートする。その合間にあって絶妙なコーヒーブレイクをいただいた感じです。

男はつらいよシリーズは、笑わせて泣かせて感動させて考えさせておしまいというのが身上ですが、ここでは泣かせて感動させて考えさせての部分は抑えに抑えて、笑わせての部分を押し出し、最後までそれをキープして終わっています。なにしろ柄本明(若い!)演ずるサラリーマンは一回では名前を覚えてもらえず、ラスト近くになっても「お面かぶったみたいな人」と言われる。これでは泣きようがありません。爆笑です。

ただ発端がそのサラリーマンの自殺未遂なのだから、そこはあまり笑ってはいかんのですが、柴又の話も少なく、「お面かぶったみたいな人」との欧州珍道中なわけですから、自殺未遂もどこ吹く風。たとえ竹下景子の人生相談に及んでも深刻にはなりすぎない。在墺邦人マダムの元カレ話も、笑いで落として一件落着。

そして無事帰国するのですが、予想もしていなかった。
この後、あっと驚く意外な展開があったんです。それは映画史に残る大ドンデン返しとかではありません。何と言うか、「そうか。ハッハッハなるほど!ポン!(膝をたたく音)」と言う感じです。
くるまやの人々にしてみたら、寅次郎がウィーンで一体何をしていたのか、何があったのかわからない。それを一発芸的にわからせるんですね。「何だ、いつものことかよ」と。
「落ち」というやつですね。うまいんです。

かつて三島由紀夫は黒澤明を評して「凄いテクニシャンだけど、思想的には昔の中学生レベル」と言ったらしいですね(注)。ミもフタもない言葉ですが、的を射ており、それは山田洋次監督にも当てはまるような感じがします。
本作は 〜ミシマ先生の言葉を借りるならば〜 山田監督が、「思想的には中学生レベル」の部分を封印してテクニシャンの部分だけで完成させた、スカッとさわやか清涼飲料のような一篇でありました。


出典忘却。忘却とは忘れ去ることなり。

追伸
ここからが本題です。

2018年にテレビ神奈川で「また来てマチ子の、恋はもうたくさんよ」というドラマが放送されていたのですが、現在アマゾンプライムで絶賛見放題配信中!

「寅さん映画」へのオマージュをちりばめたコメディでありながら、低予算のせいか舞台はほとんど主人公の家の居間だけ。しかも話はタイムループSFという怪作です。
しかし押えるところは押さえていて、最終話のラストには「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」での「メロン騒動」が再現されていますので、物好きの方は是非どうぞ。

↓ご参考

https://www.tvk-yokohama.com/machiko/
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