ひでやん

コーダ あいのうたのひでやんのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.0
家族の耳に聞こえない少女の才能。

オリジナル版となる『エール!』を先に鑑賞したので、英語リメイクされた今作と比較して鑑賞。弟が兄に、酪農業が漁業に変更されていたが、本筋のストーリーはほぼ同じで終盤からラストへの展開は今作も感動的だった。

『エール!』では役者が全員健聴者だったため、数ヶ月手話を習って役作りをしたのに対して、今作ではルビーの家族を演じる3人はすべて耳が不自由な俳優が抜擢された事が大きな違い。「ステレオタイプのろう者を描写したくなかった」という監督のこだわりによって、家族は皆ユニークな役柄だ。その中でひとりだけ耳が聞こえるルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌声は魅力的で、見事にマスターした手話も素晴らしい。

家業を漁業に変更したのは良かった。家族という船に乗り続けるのか、新たに自分の船を出すのか、ルビーの葛藤がより分かりやすくなっていた。湖に飛び込むシーンでは、殻を破って新たな世界へ飛び込む勇気、決意、挑戦が描写されているようだった。『エール!』では、「娘がいなくても俺たちだけでなんとかする、だから大丈夫」という家族だったが、今作の家族は娘がいないとまるでダメ。そんなベッタリ依存がルビーの決意を鈍らせるが、それでも夢へ向かう姿に胸が熱くなる。

音のない世界を体験した後、ルビーが父に歌うシーンはグッとくる。自分は『エール!』の方が泣けたが、評価は今作の方が高いんですね。ルビーが旅立つラストシーンで、家族に向けたハンドサインを訳さないのが憎い。字幕がないなら調べてしまう。で、意味を知ってじんときた。
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