半兵衛

ギデオンの半兵衛のレビュー・感想・評価

ギデオン(1959年製作の映画)
4.2
様々な事件に巻き込まれる警部の1日といういかにもミステリーの題材なのに、何だろうこの通常のミステリーでは体験できない奇妙な味わいは。見終わったあとこの不可思議なフレーバーを再確認するため二度見してしまった。恐らく後進の作家たちなら思いっきりフィルム・ノワールテイストの映画にするはずなのに、あくまで粋な娯楽映画のスタイルを崩さないフォードに感服。

フォード作品らしい個性的な登場人物、全編で繰り広げられるマシンガントークが前面に出され、『名探偵コナン』を『うる星やつら』のノリでやっているような感覚に。その結果事件は二の次で(大抵の事件もいつの間にか解決してるし)、登場人物の行動やアクションが印象に残っている。それでいて少女が殺されるシーンでは直接的にその行為は映されずその前の少女と加害者が交わす一瞬の会話と加害者が少女を見る後ろ姿だけで示唆したりとミステリー演出が上手いのに感嘆する。

あと主人公であるギデオン警部や登場人物が所々で披露するブラックユーモアに満ちた発言や行動も最高、一番面白かったのは警官と付き合っている主人公の娘に何も知らない母が「警察官を夫にするのはやめなさい」と言うシーン、真剣に忠告する母と恋に夢中で何も聞いていない娘のギャップに笑える。

前半でのやり取りが繋がる終わり方も小粋。
半兵衛

半兵衛