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しあわせのパンのkanacoのレビュー・感想・評価

しあわせのパン(2011年製作の映画)
3.0
北海道の雄大な自然が堪能できる田舎でパンカフェを営む、控えめながらきめ細かい心配りをする夫婦と、悩みを持ってそこを訪れたお客さんたちの交流を描くヒューマンドラマ。決して悪い顛末にはならぬ安心感があり、クスっと笑えるコメディ感を持っています。素朴なパンや料理、コーヒーが美味しそう😋(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

サンリオ人気キャラクターのプロフィールを読んでマイリストから見る作品をチョイスするシリーズ(ご興味のない方すみません)。

2023年サンリオキャラクター大賞で11位の〈こぎみゅん〉。2015年デビュー。私はこのキャラクターは最近知ったのですが、コギムーナ(小麦粉の精)の女の子だそうです。小麦粉なので何か衝撃があるとすぐ散ってしまうとても儚い性格。そしてペットはエビフライ(リード付)🍤これだけでもぶっ飛んだ設定だなぁと思うのに、将来の夢は「おにぎり🍙」だそうです。小麦粉なのに!?ま、まぁ、シンデレラも「信じていれば夢は叶う」って言っていたし…夢見るのはアリ!?😅

なので、小麦粉の妖精の最終進化として最も形のバリエーションがありそうな「パン」がタイトルに入っているこの映画をチョイス(つまりは全然関係ないってことです🥳)。

◆あらすじ◆
北海道の月浦にある、湖が見渡せる丘の上に建つ2階建てロッジ〈カフェ・マーニ〉。そこではカフェを経営する水縞夫婦…妻のりえが淹れる香り高いコーヒーと夫の尚が作る焼きたてのパン、季節のお野菜の料理を堪能することができ、そして遠くのお客さんが泊まれるように2階には温かいベッドが用意されています。カフェには春夏秋冬、さまざまな思いを抱いたお客さんがやって来ます。そして彼らは夫婦に優しく見守られながら幸せを見つけていくのです。これはパンカフェを営む夫婦と、その店を訪れる客たちの人生を描いたヒューマンドラマです。

❶北海道の田舎でパンカフェを営む夫婦と訳ありお客さんの交流を描く温かいヒューマンドラマ

北海道の雄大な自然が堪能できるような田舎でパンカフェを営む、控えめながらきめ細かい心配りをする夫婦と、悩みを持ってそこを訪れたお客さんたちの交流を描くヒューマンドラマです。物静かで穏やかでとても優しい夫婦を大泉洋さんと原田知世さんが演じます。北海道に住む他のキャラクターたちも個性豊かで、皆でお客さんたちを温かく迎え良い方向へとさりげなく導いていきます。決して悪い顛末にはならぬ安心感がある作品で、良い雰囲気でのんびりあったかい、クスっと笑えるコメディ感を持っています。

夫が焼いたパンは素朴だけれどもとても美味しそう。お客さんたちが食べる度に「サクッ」という音がします。野菜料理もシンプルですが新鮮そうで野菜嫌いな私から見ても好きな人は食べたくなるだろうなぁという感じ(私はNo Thank You)。また、妻が淹れるコーヒーも香りについてお客さんたちが賞賛するので美味しそうに感じます。飲みたい☕

「素敵な暮らしがしたいと思ったのです。好きな場所で、好きな人と散歩して、パン焼いて、自分たちが感じた季節を、パンを食べてくれる方たちにも感じて欲しいのです」という夫の夢である〈田舎暮らしの理想〉を成しえた形で描いてきます。

映像も明るい。北海道の夏秋冬春の景色が映され、昼間は緑が生い茂って美しく、夜は暗い闇を月が優しく照らし、映像をみているだけでも目が癒されるようです。

❷1話1話の着地点は納得するけど演出について疑問。特に冬の物語はムっ🙁

〈冬の夫婦〉の物語、やりたいことは分かりますが感動の描き方が嫌でした。妻が認知症でパンカフェにいるのにパン食べられないと言って、わざわざ冬の夜に北海道の雪の中に遠い近所まで店主に米を取りに行かせて、そして和食作らせておいて出来上がったら、和食を一口も食べもせずに妻が唐突にパン美味いと食べ始め、妻がパン食べた!人はいつだって成長できるのだ、感動!みたいな流れは疑問というか不快感がありました。妻の認知症によって深刻な状況の夫婦のお話の着地点はそれで勿論良いと思いますが、フィクションでしょうから、パンを絡ませるにしてもその過程はもっと描き方あったのでは。

❸この、美しくて優しい、温かい「だけ」の物語に癒されるか、腹が立つのか

穿った見方をすると、ただただ田舎暮らしの幸せな理想を詰め込んだだけの、それ以上でもそれ以下でもない物語とも言えるかと。現実感は皆無にして、とにかくクリーンなところを全面的に押し出した作品にも思えます。TVでもよく演出されている「自然と共生する田舎生活こそ人間の幸せ」の押し付けかとも思える面がある。っていうか『かもめ食堂』の北海道編感があります。そして、私が『かもめ食堂』にひっそりと感じた〈不気味さ〉を本作にもそっくりそのまま感じますが、『かもめ食堂』ですら感じる毒要素も全くないのです。

つまりは疲れている時に見たら、この全てが優しくて温かく、現実が舞台にも関わらずファンタジーのように調整された理想郷をみて癒される時もあれば、現実感がなく田舎暮らしの理想の上澄みだけを掬い上げたような気持ち悪さに心底腹が立つこともある、そんなタイプの作品かなぁと思います。感情か整合か、感性か理性か、どちらに心が傾むくかが日によって違う、とても気まぐれで気分屋な私は、見るタイミングでこの作品の好き嫌いが変化しそうです。

あと、この映画、理想郷にいらぬものは全て排除されますので、全人類に優しいようで〈独り身〉を拒絶していますね、と見るのは斜めに見過ぎかな。…見すぎだな(反省)。

🍞🐝「心底癒されるようだし、心底気持ち悪いようだし…な、ある意味、宗教みたいな作品でしたと言ったらいい過ぎかな。言い過ぎかも(反省2)。パンは美味しそうでしたし、出てくる人たちは間違いなく全て温かい人たちでした。原田知世さんの透明感と、大泉洋さんの穏やかな演技が素敵でした。

この映画で知りましたが、人は乾杯をすればするだけ幸せになれるそうです。映画好きなみなさまに幸がありますように、かんぱーい🥂✨」
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