kanaco

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのkanacoのレビュー・感想・評価

3.7
呪物である“手”を握って「Talk to Me」と唱え目の前現れた霊を自分に憑依させたら手を放して払う…勝負は90秒!そんな手軽にスリルがポンポン味わえる快楽にのめり込んだ若者たちの行く末は…。物語も演出もオーソドックスで分かりやすい!気軽にホラーを摂取できるタイパの良いイマドキな降霊術ホラー🤩(140文字)

****以下ネタバレあり&乱雑文****

◆あらすじ◆
高校生のミアは母を亡くしたばかりで立ち直れていない。父親とも気まずくなっており、寂しさを紛らわせるために親友のジェイドとその弟ライリーの家で過ごすようになっていた。ある日SNSで話題の「#90秒憑依チャレンジ」を体験する同級生の集まりに、ジェイドとライリー、そしてジェイドの現恋人でミアの元恋人であるダニエルと参加する。それは呪物である“手”を握って「Talk to Me」と唱え、目の前現れた霊を自分に憑依させるというものだ。スリルある超常現象体験ができる上にこの行為には快感も伴い、90秒のうちに手を離せば問題もない。ミアたちはこの体験に夢中になり降霊術を盛んに繰り返す。しかしライリーが初めてチャレンジを行った時ミアの母親の霊が現れて…。

❶タイパよくホラーを摂取!イマドキ降霊術にハマった若者たちの行く末を描くホラー!

オーストラリアの双子YouTuberさんの初監督作品だというホラー。直近で母親を亡くし父親ともうまくいかず、寂しさや“やるせなさ”に包まれている女子高生のミア。そんな彼女が仲間たちとSNSで流行っている〈90秒の憑依チャレンジ〉という肝試し的なお遊びに没頭していきます。しかし、そうするうちに手に負えないような怖しい事態を引き起こしてしまい…🤔💦

〈90秒の憑依チャレンジ〉
①呪物の〈手〉を握る。目の前にランダムな霊が現れる。
②「Talk to Me(話したまえ)」と唱える。現れた霊が自分に憑依する。
③霊を払うために90秒以内に必ず〈手〉を放す。
④90秒以内に手を離さなければその霊に体を支配され苦しみのうちに死ぬことになる。

90秒という時間の短さ、用意するものは呪物一つ、〈手を握って離す〉という手順の簡単さにより、回転率よく手軽にスリルと快楽がポンポン摂取できるというとても現代らしい降霊術です。安直で即効性がありタイパの良い〈快楽〉にのめり込んでいく、そんな心霊体験にハマった若者たちがものの見事に破滅していくという子気味の良いホラー作品でした。

何と言っても軽さが良いです。物語も演出もオーソドックスで分かりやすく、余計な謎かけもなし。ホラーに親しまない人でも見やすいくらいの程度で入っているグロ、ジャンプスケア、ホラー演出。そして同じく手軽にホラー映画らしい“嫌な気分”になれるキャラクター設定やストーリーライン。94分の作品で“こじんまり”とまとまり良く、バランスよく、見やすく、テンポよく……作品そのものも〈90秒の憑依チャレンジ〉のごとくホラーにサクっと浸るのにタイパが良く感じられ今時に合っているホラーだなぁと思いました😌✨

❷呪物と同じくらい主人公ミアの言動や精神面の動きが印象的だったかも🤔

私はホラー映画を見るのもホラーゲームするのもホラー小説を読むのも怪談を聞くのも好きですが、自分がその実体験の渦中に放り込まれるのは(それが作り物であれ、脳の勘違いであれ、いっそ真実であれ)断固拒否!私が小学生~高校生くらいの時にコックリさんは流行りましたが「コックリさん」という名前を口に出すだけで呪われるという噂にすら注意していたので、ヴォルデモート並みに気を使って名前すら口にしませんでしたし…。そんな私には絶対にできない本作の若者たちの肝試し的な行動力🤔

そんなわけでドラッグを摂取するが如く楽しくハイになって憑依体験を楽しむ若者たち…「よくこんなことを笑ってできるなぁ~」と鑑賞しながら真顔になってしまいます。毎回ちゃんと幽霊を呼び出せる呪物すごいですね。この〈手〉、特級呪物✨

その呪物〈手〉と同じくらい印象に残るのは若者たち…特に主人公ミアの言動や精神面の動き。オオゴトが起きてしまった時のミアの堂々とした「私は何もしてない!」の言い放ちっぷりはさすがに「🙄💦」となってしまいました。

序盤の方でも明確に示唆されていることですが、ミアは嫌な現実や受け入れがたい事柄から目を背けるのがとても上手なキャラクターです。物事に正面から向き合って合理的に事象を受け入れることはできませんが、見たくないモノをできる限りスルーした状態で自分の中で物語をつくりあげ己の中で合理化させるのは十八番です。結果あの状況下にいたっても自分の重要なミスを自身でぼんやりと否定できますし、落ち込みはすれど元カレとウキウキしたり笑顔を見せたりする余裕があり、自分の作り上げた物語(=現実)に沿って物事を解決させるため、ヒロイックにも全て間違った方を選択し続けます。

でも人ってそういうものかな…とも🤔鑑賞者として他人事で外側から見る分には何とでも非難はできると思いますが、全く同じ事象を体験した時、人それぞれが己の五感と脳で処理して汲み取った“理解”は多かれ少なかれ主観で食い違うはずですし…。何かに対して誰だって自分の都合の良い物語を作りあげる可能性はあるのかもしれない…と考えると、ミアはヘイトが溜まるキャラクターで同情よりも自業自得と突き放したくなる気持ちの方が大きいですが、一方で当事者になった時にこんな風に自分が陥らない確信もない。そんな胸糞感が〈ホラー〉としても良い感じだったかなぁと思いました🤗✨

✋🐝「幽霊にしても悪魔にしても精神的に不安定な人間が餌食になるのが基本ですが、これは私が幽霊でも「(゜∀゜)ウマー」と思ってしまうくらいの不安定さに満ち満ちた若者たち!サクっと見やすい、分かりやすいホラーで良きでした🥳」
kanaco

kanaco