王冠と霜月いつか

ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODYの王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよ…」

これはある作品の知る人ぞ知る台詞です。使われた状況がかなり異なるんですが…この映画を観ながら、特にホイットニーの父親が入院先のベッドで、慌てて見舞いに来た彼女に対して、「金」の話をし続けるシーンで真っ先に頭に浮かんだ台詞なのでした。母子家庭に育った私は常に経済的に困窮していたので、お金が欲しいと思っていましたし、愛があればお金は要らないなんて事はこれっぽっちも思いませんし、お金があれば不条理な不幸からは逃れられると思っていますが、それは、小金であってあまりの大金は逆に人を不幸に陥れる事もあるのだなと思わされました。

90年代の始めに、MTVのプログラムで個人的に最も印象に残っているのは、エリック・クラプトンのアンプラグドとホイットニーの
I'm every woman.
なんですけど、歌い終わりにに笑顔で、ふぅーと大きなお腹を撫でるんですよね。
あのお腹の子が、ボビー・ブラウンとの間に出来た映画にも出てくる娘さんだと思いますが。その娘さんも…

余談なんですが、
ナオミ・アッキーが上を観ながら歌う仕草が、コロッケさんが岩崎宏美さんの物真似をしてるみたいに見えてきてしまって正直しんどかったです。
私だけだと思いますけど(笑)

1つ残念だったのは、ボヘミアンラプソディでライブエイドの舞台に立つ前に…フレディが「善き思い、善き言葉、善き行い。パパが僕に教えてくれたことだ」という台詞が入るんですけど、この映画でもホイットニーの母親が歌うときの三つの心得をデビュー前の彼女に教えるシーンが後々回収されるんだろうなあと思っていたのがスルーされた事でした。同じ脚本家なのに。…あ、対比なのか?

フレディ・マーキュリーには最終的にジム・ハットンという恋人がいたけれど、ホイットニーには母親や娘や信頼出来るプロデューサーは居ても、添い遂げる配偶者という存在が居なかったというのが可哀想でしたね。人を見る目がなかったのかな?
残念な事です。人のこと言えませんけど(笑)

この映画を見る前にケビン・コスナーと共演した「ボディーガード」を再鑑賞したんですけど(公開から30年だそうです💦)自分の中で彼女のストーリーはあの映画で止まっちゃってるんだなと思いました。大ヒット歌手と寡黙なボディーガードのベタな恋愛物語。これでお別れ?離陸直前のプライベートジェットを止めて熱い抱擁をして、めでたしめでたしエンドロール…
 亡くなるまでの数年間の荒んだ生活の事は全く知らなくて、あの映画のレイチェルのようにチャーミングなスーパースターのまま生きて居られれば良かったんでしょうが…

彼女の二つ名は
「The Voice」作詞も作曲もしない、過去の他人の作品をカバーしオリジナルより大ヒットさせてしまうそれこそが真骨頂。それはアメリカ合衆国国歌も然り。ビートルズの楽曲が世界中で正式に使用される度、ポール・マッカートニーとオノ・ヨーコにほとんどの著作権使用料が入るのでしょうが、彼女にはそれが無い。だから歌えなくなれば彼女の収入は無くなってしまうのですね。破産したのはそれだけが理由ではないでしょうが徐々に失っていく栄光という悲劇を救う手段が無いのはなんと脆く儚いのでしょうか。
最後に歌う、
I HAVE NOTHING.
が皮肉です。
2本程あるドキュメンタリー作品を鑑賞したいと思います。

これが2022年最後に挙げるレビューです。映画館、配信サービス、地上波で鑑賞後挙げたレビューはトータルで85本でした。100本のハードル高いですね(笑)
沢山のイイね❤&コメントに感謝申し上げます。来年もよろしくお願い致します。
それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。