福岡拓海

竜とそばかすの姫の福岡拓海のネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

私は細田守作品のような作品はあまり好まないはずなのだが、細田守作品は好きだ。
(ちなみに今までの作品で特に好きなのは時をかける少女とおおかみこどもの雨と雪。)今作の竜とそばかすの姫は細田守作品として今までとは大きく違ったものになったのではないかと思った。何が違ったのかというのは後述するが、結論からいうと私は今作はあまり好きではなかった、というのも今までの細田守作品と私が愛していた大事なものが大きく変わってしまったと思ったからだ。
今までの細田守作品の特徴は、私たちが生きる世界とは少し違う、だがかなり似ている世界線で、大きなファンタジーを前提としつつも、キャラクターが生き生きと生きる、そして必ずハッピーエンドになってくれる、というようなものだったと思う。(かなり大雑把だが、)そして、その中に人の温かさがある。振り切って言ってしまうと人の温かさしかない、出てくる人物全員が温かく優しく、人間の良い面しか描かない、故にファンタジーとして消化できるという特徴があったと思う。(バケモノの子での人間は闇を抱えるという設定は設定としての例外)しかし、今作では現代的なネット問題や、アバターによるもう一人の自分、ネット警察、児童虐待だったりといった現実的に考え得る社会問題を散りばめすぎてしまったが故に、ファンタジー作品の枠を超えて現実的に何かを訴えたいのかと視聴者に勘違いさせてしまった節があると思う。(もしかするとそんな狙いがあったのか?)そうだとするならば物語としては浅い。細田守作品はもっとシンプルに人の優しさや、愛、そして青春の甘酸っぱさと成長を伝えてくれるもので良いのだ!(と私は思う。)
リアリティな映画が好きな私がなぜ細田守作品を愛してしまうのかは、そこにある。現実と違うと理解したうえでその甘酸っぱさや、人間の成長という綺麗なお話を見たいのだ。
細田守の作品はファンタジー作品であると私は思っているのでここでは物語の構成における矛盾や違和感は語らないことにする!
(今作ではその矛盾や違和感がとても目立ってしまった、リアリティに寄せ過ぎてしまったばっかりに)
しかしながら、ミレパをはじめとする楽曲、中村佳穂さんの歌唱力、仮想現実世界という設定だからこそ描き出せる豪華な映像美、その対象としてのどかな高知の自然の美しさなど、アニメ映像として圧巻だった。IMAXで観てよかった。
すずがbellとしてではなくすずとして歌を歌うシーンは震えるものがあったからこそ、そのテーマを主題にあまり他に寄り道せずお話を作ってくれたらまた細田守の好きな作品が増えて、嬉しかったのに、というのが少し残念だったな、