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竜とそばかすの姫のmitakosamaのレビュー・感想・評価

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
3.8
個人的にはとっても楽しんだ!前評判では脚本の粗を指摘する声が多かったし、見た上でその理屈も判るのだが、それ以上の感動があったよ。

高地の田舎の女子高生すず。幼少時の母の死もあり内気な性格だが、インターネット上の仮想空間“U”で、ベルの名前で歌手活動をして人気者に。そんな中Uを荒らす“竜”が現れ、ベル=すずはその正体が気になる。
ネット内の自警団の妨害を受けながら、竜とコンタクトを取り交流を図るベル。
現実世界の引っ込み思案な性格を乗り越え、竜の中の人を探し救おうと奮闘するすず。

細田お得意のネット内の仮想空間をモチーフ。竜=ケモナーといい、クジラや少年などの細田の記号が相変わらずてんこ盛りだ。
そして、今回圧倒的な「歌」を起用し映画の印象を決定づけた。アニメ映画にはキャッチーな歌・音楽が如何にヒットに寄与するか、それを証明するね。

そして今作は美女と野獣をオマージュにした内容となった。確かに細田が好きそうな内容だが、それが脚本の粗に繋がったのも事実。
先ず、何故にベル=すずは、竜がそんなに気になったのか???運命的な何かと言えばそれまでだが、そこに理由が無いと唐突感は否めなくなる。
すずの好きな幼なじみの男の子シノブ君、彼も龍の正体かも知れないとミスリードの一人では合ったと思うが、仮想空間のベルと竜というカップルに対応する現実世界のカップルが別人なのはちょっと引っかかる。
結局シノブ君はただ良い人でイケメンなキャラになっちゃったものな。
あと、やはり竜の正体である虐待されている少年に合いに高知から東京まで女の子一人でいくのは明らかにオカシイ。大人もついて行けよ。
すずが虐待してた親を睨み付けて返り討ちにするのとか、あの親子のその後か描かれなかったのも物足りなくはある。(まぁあの家族には何かしらの行政の対応が有ったのだろうと、見る側のイマジネーションで保管は出来るが)

確かに突っ込みドコロは多いし、そこが細田節全開なのだが、それでもこの映画はとても光るものがあった。
それは、ズバリすずの成長物語がちゃんと描けていたからだと思う。ベルというもう一人の自分を持つことで自分の殻を破った物語の芯がブレていない。それがあの象徴的な歌に載せて表現されれば、そりゃ傑作になるよ。

また、ネット世界は誹謗中傷が絶えない世界と描写していることも注目だ。ここはサマーウォーズのOZではそこまで描かれなかった点でもある。OZよりもUの方が仮想空間の描写として、より現実的になったということだろうねー。これは仮想現実に対する認識がより一般的になったということだと思う。
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