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バズ・ライトイヤーのaiaiのレビュー・感想・評価

バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)
4.9
トイ・ストーリーのスピンオフとしてとらえるとギャップがあるが、単体作品として観ると、その辺のSF映画を軽く凌駕するほど、非常に出来の良い作品に仕上がっている。

光速に近い速度の飛行船で行って来いをやると、飛行船の中では時間はほとんど経過してないが、もといた地球やその世界では膨大な時間が経過している。

という、有名なアインシュタインの特殊相対性理論を応用した話。

実際に試したことないのでほんとうにそうなるかどうかわからないが笑、そうなるらしい。

この理論を使った映画やドラマは多く、古くは「猿の惑星」。
地球を飛び立った宇宙飛行士がたどり着いた未知の惑星では猿が支配していた。
ところが、実はそこはかつての地球で、宇宙飛行士はたいして歳をとっていないが、地球では膨大な時間が経過し、猿が支配する惑星に変貌していた。

本作でもその理論がしっかりと、物語の縦糸を紡ぐ。

主人公「バズ・ライトイヤー」を乗せたコロニー型宇宙船がある惑星に不時着する。
そこから脱出し、全員をもといた世界に戻すには、光速で飛べるエンジンが必要。
エネルギーを調合し、何度も飛行実験を繰り返す。

実験時の速度が光速に近いため、特殊相対性理論が効いて、乗ってるバズ・ライトイヤーは歳をとらないが、もといた惑星は4年も経過してしまう。
実験は上手くいかず、何度もそれを繰り返すもんだから、惑星の時間が何十年も経過してしまい、バズ・ライトイヤーはそのままだけど、盟友の上官は結婚し、子供が生まれ、その子供が大きくなり、さらに子供を産んで。。。年老いて引退し、ついには。。。バズ・ライトイヤーは浦島太郎状態になってしまう。

比較的最近では、クリストファー・ノーラン監督のSF映画「インターステラー」なんかもそうだが、あちらが3時間近くかけて、さらにややこしく描いた世界観を、本作では前半20分程度で、わかりやすく噛み砕いた。

とにかく前半のテンポが良い。
(3流SF映画ならこの20分程度を勿体つけて2時間ぐらいの尺に伸ばしたりする笑)
後半は、自らの使命を優先させるのか、仲間を大切にするのかという、お得意の流れ。
時間軸だけでなく、パラレルワールドも入り込み(ここは若干わかりにくい点だった)怒涛の展開が実にお見事だった。

そして、ギミックというか、細かいセリフに面白いところが多く楽しい。

まず、自動操縦するためのIVANという小型のAI装置。
AI装置のわりには古典的な応答とアナログ感あふれる装置。

あるシーンで、バズ・ライトイヤーが乗る船体がミッション失敗の秒読みに入った際、遺言を残すか?という悠長なことを聞くIVANに対し、「まだだ!」とバズ・ライトイヤーが叫んだら、その音声が繰り返され、
「この録音でよろしければ”1”を」
これには爆笑。
「もう一度聞く場合は”2”を」とか期待した笑

極めつけは、あの有名な犬型ロボットのパロディだろうか、猫型ロボット「ソックス」
実験の失敗連続でメンタルやられてるバズ・ライトイヤーに贈られた、お友達ロボット。
こいつはバズ・ライトイヤーの悩みを聞いてくれたり話相手になる癒し系なのだが、のちのち、え?そんな機能持ってたん?と驚くような、時として実用的なSWのR2-D2顔負けのロボット。
日本語吹き替えは、漫才かまいたちの山内。
「ウィ~ン、ウィ~ン」とか、機械の擬音をわざわざ口にする、これがまた楽しい。

そして、今回のバズ・ライトイヤー役の日本語吹き替えは、最近、活躍めざましい、俳優、鈴木 亮平。
もともとトイ・ストーリーのバズ・ライトイヤー日本語吹き替えといえば、所ジョージ。
彼の飄々とした雰囲気とともに、どちらかいうとバズ・ライトイヤーはすっとぼけた単細胞タイプのイメージが強かった(子供のおもちゃだし)
今回の鈴木亮平は、一直線ではあるが、ミッションに対する誠実なひたむきさといった、鈴木の得意とする演技表現がバズ・ライトイヤーのキャラにフィットしていた。
これはこれでありだと思う。

ただ、冒頭にも書いたように、トイ・ストーリーという看板を念頭に置くとギャップがあるので、賛否両論の面があるかもしれない。

けれど、全体的にSF映画としての押さえるべきポイントを押さえながら、会話とか、過去SF映画のパロディとか、伏線回収(宇宙服のペンとか)とか、細かい点まで作り込まれていて、さすが、ディズニー・ピクサー作品と唸らせる作品であることには間違いない。
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