ピッツア橋本

浅草キッドのピッツア橋本のレビュー・感想・評価

浅草キッド(2021年製作の映画)
5.0
"夢は捨てたと云わないで、他に道なき二人なのに"

「浅草六区のね、浅草東洋館を目印にしだりに曲がるとスター街道なんてえ辛気臭え小道があるんですよ。そこの街灯にはね、やれ浅香光代だとか、エンケンだとか昭和大正の浅草芸人たちの遺影が貼ってある。そこで一人だけモノクロの"深見千三郎"っていう聞いた事のない舞台芸人の写真が堂々と飾ってある。
この写真はね、その深見と、愛弟子の北野武が織り成す浅草の回顧録なわけだ。
頭では東洋館なんて言ったけど、ここは昔フランス座て言ってね、ストリップ小屋だったわけよ。
え?いや俺の言ってる写真てのはさ、オタクらの言う映画ってやつよ。活動写真てぇ呼び方知らない?!粋じゃないよね、ったく。お前らみたく気難しいばっかで、芸が分かってないやつの相手してたら気分悪いったらありゃあしないよ。帰れ!俺は鯨屋行って飲み直してくる。そのスター街道の先にあるんだよ。捕鯨船つって、そこだけは変わらずにあるんだよ。ただし、お前は付いてくるなよ!いつか鯉。なんつってな。ばかやろう」

という白昼夢を、この映画の合間に見た気がした笑

タケが全力でタップシューズを鳴らすあのシーンには、かつて昼も夜も脚本家になる事ばかり考えていた学生時代が重なってしまいガン泣きした。

主題は違うけれど、ニューシネマパラダイスの様な"あの頃"を思い出させてくれる名画じゃなかろうか。
また歳を取ったら見返そうと思う。
ピッツア橋本

ピッツア橋本