半兵衛

風の餌食の半兵衛のレビュー・感想・評価

風の餌食(1927年製作の映画)
3.0
王国存続か民主化(もしくは共産化)で揺れるヨーロッパのとある国を舞台に、そこに不時着した小型飛行機のパイロットと、彼を手当てした館の女主人との恋物語。

この映画の珍しいところはヒロインのキャラクターで、王国派の夫を持つ彼女は冒頭反王国派の陰謀により夫や義理の母とともに牢獄に入れられてしまう。夫はすぐに出られたものの運悪くヒロインと義母は牢屋に長く残る羽目になり、同じ牢にいる王国派のために捕らえられた女性たちから夫は仲間を売って牢屋から出たと誤解され苛められ、しかも義母は病気で倒れ、彼女も精神を病んでいく。

そんなヒロインなので主人公が側にいないとあらぬ妄想を膨らまして主人公を罵り、夫や自分の妹が出来ていると錯覚したり、二人が自分を殺そうとしていると思い込み、主人公に助けを求めるなどクレイジーな行動をとっていく。

でも演出や話の展開は普通のメロドラマで、周囲の人たちもみな普通なので段々とその設定がノイジーになって、ただ変な女性に周囲の人が振り回される印象に。作品の雰囲気も暗いので見てる人は気が滅入ってくる。しかしこういう「妄執にとらわれていくヒロイン」という設定が後進の作家たちの手によって洗練されたかたちで世に出されていくことを考えると、ルネ・クレールの意欲は無駄ではなかったと思う。ただせっかく妹が主人公に惚れている設定があるのだから、その三角関係をもっとどきつく、暴走させることも出来たのに。

あとそういうお話なのに無理矢理ハッピーエンドにするっていうのはどうも。
半兵衛

半兵衛