のわ

映画大好きポンポさんののわのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
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幸福は創造の敵


やがて就職活動を終え、無事第一志望の所に内定をもらったことに安心と喜びを感じながらも、ある程度自由で楽だった学生生活もあと一年を切ったことに寂しさを感じる。

小学校と中学校ではおそらく今後も訪れない人生最大のモテ期だったと思う。そんなこともあり毎日すごく楽しかったことを鮮明に覚えている。小学校の頃は学校が終わったら公園に友達と遊びに行き、休日は友達の家で3DSをする。中学校では毎日名前も知らない女の子からLINEがきて、男の子だった僕は学年で一番可愛かった子と付き合うことになる。僕は最低な男だったから、その子ではない子に小学校低学年からずっと片想いしていたのにも関わらず、好意を寄せてくれた子に告白して、三ヶ月後に別れを切り出した。その子が次の日の朝、学校に登校してきたときの腫れた目を僕は忘れたことはない。高校生では打って変わって毎日すごく辛かったし、毎日泣いていた。世界を憎んでいたし、何より自分が許せなかった。でも、学生という肩書きを捨てて社会人になろうとしている今、あの頃の、痛みを伴った教訓は大事にすべきなんだと思うようになった。

ポンポさん(CV.小原好美)が劇中でジーン(CV.清水尋也)に

「なぜ、僕なんかをプロデューサーにしたんですか」

というジーンの問いに対して「君の目には圧倒的に光がなかった。他の若い人は光輝く青春を謳歌してきました。みたいな目をしていた、だけど満たされた人間は物の考え方が浅くなる。現実から逃げた人間は心の中に自分だけの居場所を作る。そんな精神性の広さや深さがクリエイターとしての素質」

僕は満たされた時期とそうでない時期を短いスパンで経験してきたから劇中でポンポさんが言っていたことは少しわかる気がする。

実際、僕がレビューを書き始めたのは莫大なルサンチマンを抱えていた高校生だったし、ずっと小説を読んで現実より愛すべき作品のなかで生きていた。

僕自身のことを「クリエイター」なんて一度も思ったことはないし、僕が経験してきたことなんてきっと、みんな経験してきたことだけど、そんなことからも逃げた僕の弱さは憎んでいるけど、感謝してないわけでもない。就活の最終面接の時に映画のレビューを書くと話したら理事長に「すごく良い特技だね」と誉められたことがある。

劇中でジーンに自分を重ねることはなかったけど、もしかしたら僕もジーン側の「クリエイター」なれたかもしれないなぁと少し考えた。「天才」といわれる人間に憧れる時期は少しあったけど、僕の場合はとにかく「普通」になりたかった。運動も勉強も話も人格も全部「普通以下」だったからポンポさんの圧倒的なカリスマ性には現実味を感じなかったものの、ジーンやナタリー(CV.大谷凛香)は羨ましく、美しいと感じた。
やがて立派な映画監督として俳優として大きな世界に旅立つ2人は僕の背中を押してくれている気がする。



青乃雲さん、就活のアドバイスありがとうございました。僕が今第一志望に受かったのはひとえに貴方のお陰です。最終面接でも、「一人の方に文章の書き方、構造、映画の見方を教わりました。」ということを言ったところ、すごく興味を持たれ、最終的に内定をいただくに至りました。本当にありがとうございました。貴方から頂いた言葉たちを僕は忘れるつもりはありません。僕にとってはこの映画のように大切なものですから
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