ニャーすけ

あの夏のルカのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

あの夏のルカ(2021年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

予告編の時点でキャラデザの魅力の無さには大きな懸念があり、実際前半まではピクサーでワースト3に入るつまらなさじゃないかと思ったが、ルカとアルベルトの正体がジュリアにバレてからの展開にはぐいぐい引き込まれた。
人間たちに同化して陸上でひっそりと暮らす魚人という題材は、欧米の作品だから当然ユダヤ人のメタファーもあるだろうし、日本人としては在日朝鮮人の存在を連想する。そういう人種問題を下敷きにしているにも拘らず、市井の人々によるルカたちへの差別や迫害はそれほど深刻なものではなく、「異形」に対するご都合主義な寛容性(『私ときどきレッサーパンダ』は完全にコメディだからギリギリ許されていた)には拍子抜けだが、そもそも本作における政治的メッセージはあくまでも添え物という印象。
じゃあ何が最大のテーマなのかと言うと、それはやはり子供が成長することによる少年期との訣別と、二度とは戻れない幸福な日々への郷愁に尽きる。北イタリアをモデルにした美しい景観が最大の威力を発揮する、詩情に溢れたラストカットは相当クるものがあり、初見時はなんとか耐えたが次観たら絶対号泣する自信がある。エンドロールで流れる井上陽水の「少年時代」も素晴らしい選曲で、こういう作品への理解と敬意がしっかりと感じられるやり方であれば、タイアップだろうがなんだろうが日本独自のマーケティングも全然悪くないと思う。

ここから余談。
序盤、ルカが毎日仕事をサボって地上でやんちゃしてることを見透かしたかーちゃんが「あんたもうこれから深海に住みなさい、おじさんに頼んであるから」と激怒するシーンに登場する“ウーゴおじさん”とやら、こいつのインパクトが絶大。深海魚だからギョロ目で内臓透けててめちゃくちゃキモくて最高、っていうか就学前の子供が見たら普通に泣くと思う。
で、こいつが「深海はいいぞ〜、微生物旨いぞ〜」とかほざいてるから、俺も(ぶっちゃけベスパとかどうでもいいからキモい深海が見たいんですけど!)なんて思ってたら、ポストクレジットのおまけ映像でちゃんと見せてくれたのでとても感動した。スピンオフで『あの夏のルカ 〜深海地獄篇〜』とか作ってくれ。
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