カテリーナ

川っぺりムコリッタのカテリーナのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
4.0
荻上直子の作品は見るまでが長い
何故ならば、作品が重いから それは、重量級 現実の厳しさを突きつけられた後
どうしようも無さに打ちひしがれる
それが分かってるから億劫になる
でもその厳しさの中に一筋の光を見せてくれることも分かってる
だから、見るつもりのないこの作品を最後まで鑑賞したのだ
しかも、途中から

松山ケンイチがで扇風機のまわる畳の部屋
で質素な食事をしてる
そこに風呂上がりのムロツヨシが髪の毛をタオルで拭きながら現れる
「勝手に風呂に入るんだから‥‥」
と呟くマツケン 何?友達?家族?
この作品が高評価だったのは知ってる
ので、その正体を見届けたくなった

ムロツヨシ(島田)の無垢な気持ち悪さを上手くキャラクターに落とし込んで周りの人々の
エキセントリックな風貌や台詞を中和させてる
満島ひかり(南)は昭和のおばあちゃんの洋服かと思わせるよく言えばレトロな
ファッションをドヤ顔で着こなしてるのが
微笑ましい
最近どんな作品にも顔を出すたシリアスもコメディも両方イケる吉岡秀隆も
子連れの墓石の訪問販売員を楽しそうに演じていた
『怒り』の過去に殺人の前科を持つ役柄を彷彿とさせる暗い顔で猫背で歩く
松山ケンイチ(山田)

荻上直子はこのハイツムコリッタの住人を
浮世離れしたある意味ファンタジーに近い
様相で 日本の何処でもない場所でその日常を緩く描いた
その住人たちは皆家族の死の苦しみや悲しみを背負い 貧困の中
表面的には平気な顔をして生きている
だからここに流れて来た山田をそっけなくも暖かく迎える
そして繋がっている
命の電話で語った金魚が空へ昇っていく
逸話は住人の口で語られ皆でその話を信じる

「俺も連れてってくれ」と
空に向かって叫ぶ島田は何度も拳で頭を叩く 喪失感は全て自分に向けて苦しみに耐えて来たのが見え隠れして私は落涙が止まらなかった
(ベンアフの『コンサルタント』を見たばかりだったのでその仕草を見ると彼女を思い出して更に滝のような涙を流す)

大切な人の死を見つめながらぶっきらぼうに日々をやり過ごす人々の優しさに溢れた良作だった。
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