Kumonohate

緑の小筐のKumonohateのレビュー・感想・評価

緑の小筐(1947年製作の映画)
3.5
(1)山奥に2人きりで暮らす炭焼き夫婦に男子が誕生。(2)夫は「世界を知りたい」と山を後にするが、乗り込んだ漁船が遭難。(3)炭焼き小屋で成長した息子は、父が作った緑の箱に手紙を入れて川に流す。(4)箱は何年もかけて大海に辿り着く。(5)奇跡的なハッピー・エンディング…という昭和22年のファンタジー。

生まれたての乳飲み子と妻を残して山を下りる? この子学校は? いったい何年ロビンソン・クルーソーやっていた? などなどツッコミどころは満載だが、そんな細かいことはどうでもよいぐらい演出がユニーク。

一言で表現するなら「映像と音楽でつづるメルヘンチックな映像抒情詩」(DVDの記述より)。より具体的には、オーケストラや独唱や合唱が延々と流れ、それを背景音楽とした、大自然の美をふんだんに盛り込んだ叙情ドラマ。しかも、独唱や合唱の歌詞はナレーションの役割を果たし、文言が画面にスーパー。さらに、82分の全体尺のうち(1)(2)(3)(5)に割かれるのは40分程度で、残りは、山奥の渓流に流された箱が四季折々の自然を背景に様々な動物や人間と触れ合いながら海に出るまでの、叙情性たっぷりな “小箱の大冒険” で占められる。

まあ、この “小箱の大冒険” の描かれ方は意味深で、子どもの成長に重ね合わされているような気がしないでもない。あるいは、そんな理屈よりはもっと感覚的に作られた作品なのかもしれない。いずれにせよ、一歩間違えばただの珍妙な作品に堕してしまう可能性があるこうした演出を、楽々と容認できる時代だったとすれば羨ましい限りである。
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