スワヒリ亭こゆう

サン・セバスチャンへ、ようこそのスワヒリ亭こゆうのレビュー・感想・評価

5.0
ウディ・アレン監督の作品が日本でも公開になってくれて良かったです。早速、観てきました。

今回の主役はウォーレス・ショーンですが彼が演じたモートという男は、どう見てもウディ・アレン監督そのものですね。
ニューヨーカーで小説が書けない小説家。ウディ・アレン映画のお馴染みの登場人物の設定です。
ウォーレス・ショーンも初老の男性ですしね。

サン・セバスチャン映画祭を舞台にした作品です。
映画の広報をしている妻に連れられて、スペインまで来てみたら妻が担当している映画監督と妻がどうやら出来てるんじゃないか?という所から始まるストーリー。
ハリウッドから追放されてしまったウディ・アレン監督のヨーロッパ映画への敬愛が込められた作品です。ゴダール、トリュフォー、フェリー二、ベルイマンなど数々の映画のオマージュが散りばめられています。
ウディ・アレン版の『勝手にしやがれ』は凄かったです。ジャンプカットは見応えありましたね。

自分に対する卑下を皮肉と取るか笑いと取るかは分かれるかもしれないですが、ウディ・アレンの映画は業の肯定。
皮肉を業の肯定として笑える器量が無い人には向いてません。
小説家になったものの1ページも書けない。だけど妻と出来てる若いフランスの映画監督は気に食わなくて、昔のヨーロッパ映画への愛を語る男なんて、面白いに決まってます。
その内に具合が悪くなって病院に行ったら女医が美人で恋に落ちる。オッサンいつまでやってんだ!って笑っちゃうのがウディ・アレンの魅力です。
いくつになっても女性と恋に落ちるのは良い事だと思いますよ。素敵な女優さんでしたから、映像としても美しい街並みと美しい女性とおじいさんというのが良いんじゃないかと思います。

本作でオマージュしている名監督にとっくに並んでいるんですけど、ウディ・アレンはまだ自分自身を納得してないんですね。
向上心というか、被害妄想にも近いです。
僕の中では最も敬愛する映画監督。
彼の新作が観れるのが嬉しくて楽しかったです。
最新作はパリが舞台らしいので是非とも公開して欲しいです。