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プルーフ 神の存在のドントのレビュー・感想・評価

プルーフ 神の存在(2015年製作の映画)
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 2015年。わぁ~ワハハハ~、ばかやろう~。運転中の口論の最中に事故に遭い、夫を亡くした天体物理学者のジニーン。保守的な大学で「神はいない。宇宙の起源は科学で説明できる」と言ったら学生や学長(司教)に「罰当たりじゃないですか?」「無神論者から献金を受けるな!」と言われ叱られおかんむり。そんなある日90を越えるであろう女性科学者から手紙を受け取り……
 オカルトスリラーでありつつ、簡単に言うと「神の存在を脅かす科学は悪!」「科学者は悪魔の手先!」「科学者は地獄を見る!」というキリスト教おどし映画。似たような映画でもニコラス・ケイジの『レフト・ビハインド』はまだ人が消えたり飛行機がヤバかったりした分エンタメしていたなぁとしみじみしてしまう。エンタメしていてよいものかというのはさておき。
 とにかくコチコチな人たちしか出てこない。主人公は「宇宙の起源に神なんかいるわけないじゃないですか? わかりませんか? 知性が足りないのでは?」とか言うし、学生や学長は「神はいます! 科学でその不在を証明しようなど不敬の極み! 冒涜! 人でなし!」とか言う。科学と宗教がギスギスしっぱなしですごい。優しいのは主人公の娘さんとワンコと悪魔だけ。なお犬は無惨に死ぬ。
 で、アインシュタインを越える主人公の「自立自存論」により宇宙の起源は証明され、それにより神の存在は棄却、信仰心篤かった人々は打ちのめされ世の中は荒廃、主人公はトマトを投げつけられたり留守電に脅迫メッセージが入っていたりする。そんなこんなで悪魔が力を増して、主人公は暗黒空間にいる著名な科学者たちに褒めそやされて賞とかゲットして偉くなるも、悪魔に迎合した報いとしてかなしい結末を迎えるのであったという、だいたいそんな感じの……映画で……
 低予算なのは措くとして(なんせ事故のシーンではクラッシュの瞬間すらない)、こういう内容はもうちょっと上手く、丸めて語らないとこう、説得力とか……改宗には結びつきませんよ……と思う。ギスギスしっぱなしだし、科学/科学者を悪魔扱いしてるし、悪魔になびいている主人公の主観としても学生や神父、その幻覚がどう見てもホラーの描写だし、話が過去現在未来?とこんがらがっていてわかりづらい。
 と書いていて、これらのシーンが意識を失っている悪魔の見せた誘惑の幻覚の類だったのかなとも考えたが(優しい人がいないのも悪魔が主人公をとって喰うために作った世界だから)、それにしたって映画としては感じが悪いし、科学や信仰のない人を突き落とすような作であることには違いない。そうとも読み取れると描くことで抜け道を作っているのではないか。むしろこれ、悪魔側がキリスト教を貶めようとした映画なのでは……との考えすらよぎる。
 まぁ改宗目的ではなく宗教闘魂ビンタ映画なのでこれでいいのかもしれない。「あっ、これ宗教映画だな?」と勘づいた上で観た俺が悪い。闘魂ビンタされようと会場に行ってビンタされたら「なにするんですか!」と言うようなものだ。いやしかし、それにしてももうちょっとこう、語り口とかやり方というものがあると思うのであった。あんまりよくないと思うんですよ、こういうの、ウン。「教授が救われるよう皆でお祈りをしましょう……」と言うと学内の全員が祈りはじめて主人公が怖がるシーンや、夜道に司祭たちの幻覚が現れるシーンはホラーとして割とイケている。
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