Omizu

ブルースカイのOmizuのレビュー・感想・評価

ブルースカイ(1994年製作の映画)
3.7
【第67回アカデミー賞 主演女優賞受賞】
ジェシカ・ラングが5度目のノミネートにして初受賞を果たした作品。監督は『トム・ジョーンズの華麗な冒険』のトニー・リチャードソン。ジェシカ・ラングの相手役にはトミー・リー・ジョーンズ。

ハワイに駐屯するマーシャル少佐には美人だが虚言癖があり情緒不安定な妻カーリーと二人の娘がいる。マーシャルがネバダに転属になったことで過程は崩壊し始める…

簡単に言えばお人好しのトミー・リー・ジョーンズが悪妻ジェシカ・ラングに振り回されるという話。そこに核実験のサブストーリーが挿入されるのだが、それが中途半端なのが気になるあたり。

ジェシカ・ラング演じるカーリーは田舎の農家出身なのに「父は実業家でテレビ局をいくつか持ってる」とか「父は外交官で世界を飛び回っていた」などと言い、感情が制御できず所構わず当たり散らしたり踊り出したりとかなりめちゃくちゃな人物。

それでもカーリーを決して嫌いにはなれない。屈折しているとしても家族を愛しているのは分かるから。ジェシカ・ラングはそんな複雑なキャラクターを見事に演じている。むしろこれが素なのではと思うほど自然に。

後半はかなり辛い展開になる。ある理由でマーシャルが強制入院させられるんだけど、薬漬けにされてまともにしゃべれなくなっている描写は辛すぎた。

そもそもはカーリーが悪いのは間違いないんだけど、彼を救おうと行動するのもカーリー。かなり突飛で大胆、考えなしの行動で、子供たちからすればいい迷惑だけど、それでも全力で夫を救おうとする。

言動は破綻しているけどやっぱりその根底には愛があるカーリーというキャラクター、好きだなあ。

ラストも爽やかでいい気分になれる。「ブルースカイ」は核爆弾の名前だけど、まさしく青空の下で走り出す爽快感で終わるのがよかった。

一方で核実験のサブストーリーがいささか適当ではないか、というのは気になる。終わり方は夫婦映画としてはいいんだけど、核実験を描いた作品にしてはテーマを提示しただけで終わっている。何の解決も示していないのがモヤモヤする。

例えばわざわざ会いに行った被爆したカウボーイたちはほったらかしだし、新聞社に持ち込む云々はどうなった?一般人が軍の実験のせいで被爆したのは確かなんだからそこは多少なりとも描くべきではないのかと思ってしまう。

まあただ、核実験に反対する姿勢であることは分かるし、そこを描いてしまうと脇道に逸れてしまうというのも分かる。あくまで夫婦を描きたいのならこれはこれでいいか。

ジェシカ・ラングがとにかく素晴らしい。この役を自然にできるのは彼女しかいないだろう。作品としては言いたいことがある映画だが、主演女優賞は納得の作品だった。
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