Omizu

愛をつづる詩(うた)のOmizuのレビュー・感想・評価

愛をつづる詩(うた)(2004年製作の映画)
4.0
【第8回英国インディペンデント映画賞 主演女優賞ノミネート】
『オルランド』サリー・ポッター監督が911テロに触発されてつくった作品。主演は『カラー・オブ・ハート』ジョアン・アレンと『007 カジノ・ロワイヤル』シモン・アブカリアン。

非常に面白く機知に富んだ作品だった。静止画を多用した映像やモノローグ中心の構成が上手く作用していて独特の雰囲気を醸し出していた。

全体としては不倫劇なのだが、人種の違いという社会問題や生死と性についての哲学的問答など普遍的な話になっている。

科学者として働く「彼女」とレバノンから来た元医師の料理人「彼」は互いに惹かれ合う。しかし出会った時点で二人は違う立場にいる。かたや白人のエリート、かたやキャリアを捨てた移民。肉体を求め合うが精神はどんどん離れていくのは必然。

物語が進むにつれて「彼女」の自分を棚に上げた身勝手さがにじみ出てくる。自分を正当化しようとしているいやらしさ。しかもそれに自分では気付いていないのだからタチが悪い。

ベルファストの叔母は本筋には何ら関係がないのだが印象に残る。彼女の死に際、モノローグで語られる内容が「逃れられない死」について深く考えさせられる。

同じくらい印象に残るのは掃除婦たちの目。目に見えないものが全て見えたら何も触れなくなってしまう、終わりのない掃除をするのが私たち・・・この世の全てを見通すような目に我々は捕らえられている。

サリー・ポッター作品はこれが初めてだったが、作風がよく分かったしかなり好きだ。他の作品も観てみよう。
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