とらキチ

親愛なる同志たちへのとらキチのレビュー・感想・評価

親愛なる同志たちへ(2020年製作の映画)
4.2
今現在の状況とそのまま地続きの物語。
労働者の国であるはずの“社会主義国”で労働者がストライキ、抗議の声をあげる。そんなあり得ない事態を文字通り“無かった事”にするため、労働者達に銃口を向け無差別に発砲する。
今作を観ていて思ったのが
「全体主義、民主主義関係なく、所詮“国家”がやることって、こんなものだよ」
と突きつけられているようだということ。
国家にとって都合の悪い事があれば、民主主義国家ではなかなか難しいんだろうけど全体主義国家では本当に人の口に戸を立ててしまうし、アスファルト上の血糊が洗い流しきれないのであれば、上から新たにアスファルトを敷き直して全ての事を“無かった事”にしてしまう、それだけの事であると。全ては国家の無謬性を維持証明するためだけに。
今作の元々のテーマは、それまで希望を抱き、信じ続け、忠誠を誓っていた共産主義国家の矛盾、欺瞞を暴き、その国家と家族との間で引き裂かれてしまう母親を描いた物語なのだが、その母親の憧憬の象徴だったのが、あのスターリンであるというところにコチラはクラクラしてしまう。国民性なのか、あるいは人民とは元々そういうものなのか…。罪深いというか、虚しいというか、なんだかなぁ…と思ってしまう。“カリスマ的な指導力を持つ強いリーダー”に言われるがままに率いられ、自らは考える事無く付いていくのが結局人間にとって一番楽だという本能なのか。そしてこの事は、彼の国に限らず万国共通の事柄とも言えるのではないか。
歴史は繰り返す。2022年我々はまさに今、それを目撃している。
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