てっぺい

ノマドランドのてっぺいのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.0
【エンドロールから顧みる映画】
エンドロールで気づかされる、劇中のノマド達が全員実物だという衝撃。ノンフィクションをノンフィクションのまま映画化したピカイチの作品力で、どの作品よりも、登場人物の悲哀や言葉の重みが心にどストレートに突き刺さる。
◆概要
第77回ベネチア国際映画祭金獅子賞、第45回トロント国際映画祭観客賞、第78回ゴールデングローブ賞作品賞・監督賞、第93回アカデミー賞作品、監督、主演女優など6部門ノミネート作品。
原作:ジェシカ・ブルーダーによるノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」
監督・脚本:「ザ・ライダー」クロエ・ジャオ
出演:「スリー・ビルボード」フランシス・マクドーマンド、『グッドナイト&グッドラック』デヴィッド・ストラザーン
◆ストーリー
ネバダ州で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失う。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。
◆トリビア
○ 主演のマクドーマンド自身の生き方や考え方、ファッションなどライフスタイルのすべてを投影して、ファーンというキャラクターが創り上げられた。ファーンとデイブ(デヴィッド・ストラザーン)の物語も、マクドーマンドとストラザーン自身の関係性を反映しながら構築された。(https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland/special.html)
○ 出演者たちは、2人(フランシス・マクドーマンドとデビッド・ストラザーン)以外は“実際のノマド”。(https://eiga.com/movie/93570/special/)

◆以下ネタバレレビュー

◆エンドロール
エンドロールで受ける衝撃。ファーンとデイブの二人以外は、役名と実名が同じで、それが20〜30名ほど、続いていく。ホントに劇中にいた人達が“実際のノマド”だという証明であり、彼らが劇中で放っていた悲哀も、言葉の重みも、このエンドロールで全部リアリティに変わり、映画全体がここで心にずっしり沈み込む感覚だった。
◆サヨナラがない
ラストでノマドが語った、彼らが生きるのは、分かれてもまたどこかで巡り会う“サヨナラがない”世界。実際、劇中でサヨナラを言うシーンはなかったように思うし、ファーンとリンダ・メイが何度か別れていながら再会を喜ぶシーンも無かった。そうする事で、再会することがある意味“当然”だと描かれていたし、それを言いたいがための脚本だったんだと気付かされた。”サヨナラがないから、また会えるような気がする。僕は死んだ息子にまた会えるような気がするし、君は死別したボーにまた会える。” そんなノマドの前向きな言葉で、ファーンは元の家へ夫に会いに行き、そしてまた仲間に会いに荒野へ車を走らせた、そんな、希望を持った、前向きなラストだったように解釈した。
◆ノンフィクションムービー
もっと言えば、そんな脚本力も含め、この“ノマドオールキャスト”で映画を作ってしまう、監督や製作陣の斬新でぶっ飛んだ才能が素晴らしい。実在の人物が数人出てくる映画は数あれど、ほぼオールキャストで作ってしまったこの映画の存在感はピカイチだと思う。
◆ロードムービー
延々と続く荒野。ファーンがガイドの目をかいくぐって忍び込んだ岩場もとても美しかったし、ファーンが泊まる場所を変える度に俯瞰で映し出される景色の雄大なこと。ラストの雪積もる砂漠もとても綺麗だった。
てっぺい

てっぺい