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海辺の彼女たちのKUBOのレビュー・感想・評価

海辺の彼女たち(2020年製作の映画)
3.8
昨年、話題になっていたのに劇場で見れなかった『海辺の彼女たち』をWOWOWで鑑賞。

最近ニュースでも大きく取り上げられていた「技能実習生」の問題。

本作の主人公3人組もベトナムから来た技能実習生だったが、1日15時間、土日も残業代もなく働かされ、職場から逃げてきた少女たちだ。

同じベトナム人のブローカーのような男は
「パスポートと在留カードは使うな。君たちは不法就労者だからね。どれ使ってバレても逮捕、ベトナムに送還されるからね」と言うが、優しくて妙に冷静だから逆に怖い。

途中「パスポートは会社が持ってる」って台詞もあるけど、実習生からパスポート取り上げちゃうんだ。これもびっくり!

逃亡先の雪深い港町で、3人の仕事は順調なように思えたが、仲間のひとりフィンが腹痛で倒れる。身分証明書がない彼女たちは日本の医療サービスが受けられない。3人は窮地に立たされる。

本作の藤元明緒監督との出会いは在日ミャンマー人家族を描いた名作『僕の帰る場所』だが、藤元監督はいつも日本で暮らすアジア人の問題にフォーカスした作品を作る。

『僕の帰る場所』でも同じことを書いたのだが、聞きなれないベトナム語とベトナム人俳優ということもあって、フィクションとわかっていながら限りなくドキュメンタリーに近い手触りの作品を撮るんだ、藤元監督は。

家族の借金を返すため、弟や妹を大学に行かせてあげるために、日本でお金を稼ぐことを選んだ彼らに、我が日本国は優しくはない。

ラストシーンは唐突だが、その分、フィンの内面をおもんばかる余韻を残す。
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