ひろあき

アル中女の肖像のひろあきのレビュー・感想・評価

アル中女の肖像(1979年製作の映画)
3.8
冬に見たかった映画。アル中女と謳っておいて自分以外が狂っているという演出は、彼女が正気であり狂気であることの表現として上手かったし、酔っ払いの主観性を留め具にして世界をひっくり返したようだった。

自身を理想の肖像として結ぼうとする力(着飾ること)と自身を一つの肖像として結ぶまじとする力(鏡の否定)を拮抗させながら、映像は飛躍や停滞を繰り返し千鳥足で進む。基本的に沈黙を貫く主人公は社会との関係を断絶しているように見えるが、無言で✌️を掲げてコニャックを頼み続ける彼女は、ピースサイン・ビクトリーサインだけでなく、 "もう一人 ”を呼び込むサインを送り続けている。

しかしこの映画は片道切符でjamais retour (決して戻らない)と宣言して始まるので、優雅なカタストロフによって主人公が退廃の美の中で息を引き取り現実世界から飛翔して閉幕するものだと思っていたが、その実、酩酊しつつもヨロヨロと歩くことを止めない・止めれない、ひどく誠実で痛ましく強かなラストであった。
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