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あのこは貴族の小のレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
3.3
記録によれば2021年3月に映画館で鑑賞した本作。その出自から不自由を強いられる主人公の貴族の女性が、男性を介して繋がった一般ピープルの女性(ミキティ)の生き方、言葉に触発され自分らしく生きることに目覚めるという感じの話だったかなあという記憶で、正直、あまり刺さる感じがなかった気がする。

鑑賞前後にNHKの『100分de名著』でピエール・ブルデューの『ディスタンクシオン』の回をオンデマンドで観たこともあり、いつか、社会階層によってあらかじめ決定づけられた格差みたいな視点で何か考えることができるかなと思いつつ、配信で“ながら”再鑑賞。

『ディスタンクシオン』的視点は空振りだったものの、貴族階層のシーンに<女性の人生を搾取する家父長制>であることを強く示すエピソードが満載であったことをすっかり忘れていた自分に驚き、興味が出てきた。
(引用は次のURLの岨手由貴子監督インタビュー:https://telling.asahi.com/article/14121989)

この話、主人公のキャラクターもあってほんわか、しみじみまとまっているけれど、構造的には児童婚の風習に抗いラッパーになる夢を追いかける『ソニータ』と変わらないと思う。

ソニータでは児童婚のことを覚えている。しかし本作では、法に反するわけではないけれど人としてどうなの?と思うお高く止まった選民意識(かな?)と女性のモノ扱いについて自分の記憶にほとんど残らなかった理由を2つ考えてみた。

1つは貴族を嫌なヤツだと思っているから。財力も身分も自分より上の階層で、その言動は鼻持ちならない。そんな貴族階層の中で悩んでる貴族に同情の気持ちは持ちにくい。

我らが一般ピープル代表のミキティが主人公にもっともらしいことを言って、それが彼女の人生を変えるきっかけとなる。これ最高、やっぱこっちだよね。

だって<大人の俺が言っちゃいけないこと言っちゃうけど 説教するってぶっちゃけ快楽 酒の肴にすりゃもう傑作 でもって君も進むキッカケになりゃ それゃそれでwin-winじゃん? こりゃこれで残念じゃん そもそもそれって君次第だし その後なんか俺興味ないわけ>(SEKAI NO OWARI『Habit』)だから。

もう1つは貴族の方々が私に与える影響はないと思っているから。先に引用したインタビュー記事で岨手監督は「日本社会の構造論」について問われ、<特権階級のような世襲議員が、自分たちにとって都合がいいように世の中のルールを決めている。下の階層の人たちは、そのルールに合わせて生きている>と言うけれど、自分はそれを実感し、問題視していない気がする。

投票率が低いのは多くの人が、監督が言うところの「特権階級が決めたルールに合わせて生きている」ことを黙認しているからではないのか(自分はオジサンになってからは投票してますが)。

いやむしろ、こうした特権階級(貴族)の方々は既得権益を守るため当選することだけが目的で、国民の顔色を伺い、目先の欲望を満たすことに汲々としているのではないか。貴族の方々は我々一般ピープルの下僕のようなものではないのか。

しかしその結果、貴族の方々はカクテルパーティーを続け、国民はずっと酔わされているだけではないのか。いつかお酒が尽きてカクテルパーティーが終わった時、国民は大きなツケを払わされるのではないのか? あれ? 貴族の方々は私に大きな影響があるのかもしれない。

とかなんとか、貴族の方々が我々一般ピープルに影響を与えるのであれば、それが伝わるような部分があった方が好みだったかな。(どこか見落としているかしら?)
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