好き勝手なてそ

海の上のピアニスト イタリア完全版の好き勝手なてそのレビュー・感想・評価

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曲だけ知っていたがそれ以外予備知識ゼロで鑑賞。
■あらすじ
豪華客船の中で置き去りの状態で発見された赤ん坊。彼は1900(ナインティーンハンドレッド)と呼ばれ、船で働く男たちに育てられた。
やがて、船にあるピアノを嗜むようになり、独学で培った自由な演奏が話題に。1900の演奏はみるみる巷で有名になるーーという話。
「ニュー・シネマ・パラダイス」の監督ジュゼッペ・トルナトーレと音楽エンニオ・モリコーネが再度組んだイタリア映画。

■ざっくり感想
1900年代という時代について、戦争や移民問題に貧富などというテーマで問題提起した作品だったと思う。
乗客を映すことで時代のリアルを表しつつ、1900というどこの国にも属しない人間から見た自由な視点から紡ぎ出されるセリフは、戦争が長らくない今の日本人にとっては比較的普通のように聞こえるかもしれない。戦争が身近な国の人が見たらどう思うんだろう?
戦争など重めのテーマだったと思うけど、想像していたよりコメディタッチなセリフが多めに含まれていて、特に前半は予想していない見やすさがあった。
音楽はたくさんピアノの挿入曲が聴けて、音楽映画としても良い。


ーー以下ネタバレ含みますーー


■ジェリーとのピアノ対決とは
アメリカでジャズの創始者として名を馳せているジェリーは1900にピアノ対決を申し込む。
ジェリーの演奏は、1900と対比して軽快できれいなラグタイム(のように聴こえた)。
ニューオリンズで「売春宿の客の気を散らさない」として評判を得ていたと紹介されていたが、なるほどタバコの吸殻すらも落ちない。
対して、魂から来るような自由に激しく演奏した1900の音楽は、ピアノの弦にタバコを近づけると火がついた。(そんなことある?とは思ったけど)
魂を震えさせる演奏をした1900が買ったということだと思うけど、純粋にジェリーから音楽を教わりたかった1900からすると、あのピアノ対決を経て、ジェリーの喧嘩腰の態度やある種の模範的な演奏を聴いて、彼やアメリカ自体に驚いたのかもしれない。

■アメリカは自由の国なのか?
船の甲板から自由の女神を見つけた者は我先にと「アメリカだー!」と叫び他の移民たちも喜びに沸くというシーンが何度も現れる。
船から見たアメリカは、自由で希望に満ちた国。
しかし、描写されるのは憧れをもってアメリカへ渡る人たちと戦争。
国籍を持たない1900は血の流れないピアノ決闘ですら理解できず「なぜ決闘?戦ってどうする」とマックスに問いかける。このセリフは船さえ無事なら戦争と無縁な1900だからこその本質的な疑問であったように思う。
全くの無垢な1900が船で見れなかったアメリカの実態に対して怯えるのは理解出来るかもしれない。