三四郎

新雪の三四郎のレビュー・感想・評価

新雪(1942年製作の映画)
3.6
瀬川昌治監督の著書『素晴らしき哉映画人生! 』に「渡邊祐介は、都立第八中学在学中に五所平之助の『新雪』を見て映画監督を志し、五所の門を叩いたが断られた」という話が載っていた。
この作品は、大映初の大ヒットとなったようだが、たしかにロマンスありコメディ要素ありでおもしろい。
一人部屋に居る月丘夢路を捉えるその構図の美しさ。月丘夢路が縁側から水島道太郎の下宿先を見上げる表情、一人物思いに耽る表情、そのアップ、なんとも素晴らしい。
哀しいかな、フィルムの状態が最悪で見苦しいが、そんなことどうでもよくなるほど、爽快なメロドラマだ。

月丘と水島が帰り道で出会い、揃って歩くシーン。キャメラは二人の脚と靴だけを捉え、上半身を映さない。小津安二郎の『淑女は何を忘れたか』の桑野通子と佐野周二のデートシーンと同じ演出だ。当時のハリウッド映画でもよく使われた技法だったかもしれない。こういう演出、大好きなんだよなぁ。sehr romantisch!

さて、冒頭シーンで驚いたのは、児童と教師が裸足で教室掃除をしているシーン。昔は裸足で教室掃除をしていたのかしら?
水島は生徒の個性を伸ばし、独創性を重んじる大学出の教師で実に好感が持てる。現代でも先進的な思想を持った教師と言えるだろう。
水島は、子供はのびのびとしているのが良いと言い、木登りも大いに結構と言うが、学校側は、危ないからやめさせろと言う。いつの時代も学校側と親は過保護すぎるということがわかる。

「チャーチル」のシーンは笑えた。
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